「1枚の写真からの支援と合理的配慮①」東京宇佐川研1月度より

一枚の写真から

昨年4月ごろ、筆者がfacebookを見ていたところ、お子さんの書字について投稿されているお母さんがいらっしゃいました。

小学3年生のお子さんで、書くことが苦手にも関わらず、頑張って宿題をやっている様子の投稿です。

一年前の宿題の様子

こちらの写真を見て(保護者の許可をいただき投稿しております)、気が付くことがいくつかあり、コメントをいれさせていただきました。

「この手の使い方からしたら、ものすごく頑張って、丁寧に書いていることが伝わってきます。」

という内容をコメントしました。その後、少しコメントのやり取りをして、もっと楽に書字ができるようになることと、この手の様子からつながる発達像をお伝えしました。

たった、一枚の写真からでしたが、ここから、一年後のケーススタディでの報告とつながりました。

高次化理論「発達臨床的子ども理解」

発達の意味性をつなぐ

「発達の意味性をつなぐ」ことは高次化理論では必須の考え方です。当たり前のことですが、1つの育ちは様々なことに関連を及ぼします。

逆に考えると、育っていない部分があると、育っていないからできない部分を代償的に補うような育ちの姿が生まれます。

この1枚の写真の中で、その代償的な部分が見えました(手だけの写真でしたので、表情や視線まで見ることができれば、さらにわかることがあります)。

3秒ほどで気が付いたことを伝えましたので、2点の気づきを伝えました。もう少し時間をかければ読み取れることがもっとたくさんあったかもしれません。

手の発達から

まず、すぐに右手の親指が気になりました。通常ですと、人差し指と向かい合うようにして鉛筆を握ると思います。

それが、横つまみやサイドピンチと言われる握り方になっています。

ここからだけでも、まだ 「拇指対向(ぼしたいこう)」 の握りや「パワーピンチ」と言ったりする握りに到達していないことが分かります。

※香川県の高松養護学校さんの支援部の資料が分かりやすいと思いますので、転載させていただきます。こちらからから↓
goo.gl/qV8TKq

もう一つは、この拇指対向握りに関わる部分ですが、右手の小指が薬指よりも出てしまっている様子も確認できます。

本来、小指と薬指は手の中の安定を作り出す部分ですので、書字する際は握りこんでいる部分です。

小指、薬指がまだ安定を作り出せていないことから、親指、人差し指、中指の撓側(とうそく)3指による自由度の高い操作をするための指の機能が発揮できていないと読み取りました。

発達のつながり

このように、指の部分だけでも読み取れるものがあります。

さらに、指の育ちの関連性から発達の意味をつないでいきます。

本来であれば、赤ちゃんの時期にハイハイなどで肩甲骨回りが育ちさらに、両手で体を支えるという発達があり、さらに、手の中の発達が育ち指先の操作も高まっていくという流れがあります。

この発達の流れから考えると、きっとハイハイなどをする際に必要となる体幹機能も育ちきれていないことから、この指の育ちにつながっているのではないかと考えることもできます。

発達のつながりから、お母さんに「姿勢の崩れ」や「片足立ちはできますか?」などの質問をしていきました。

すると、「姿勢はすぐに崩れてしまう」「片足立ちは軸足と反対の足を股に押し当てればできる」というお返事でした。

姿勢のくずれなどは、平衡感覚や固有覚のはたらきが大きくかかわります。

そうなると、平衡感覚との関係性から眼球運動にも困難があるのではないかと予想できます。

目の使い方について話を聞いていくと、教科書の音読に非常に困難をもっているとの回答をいただきました。

目の動き、姿勢調節、手の操作など様々な困難な状況を抱えつつ、頑張って宿題を他のお友達の数倍の時間をかけてやり遂げていることがやはりわかりました。

ホームワーク(遠隔の家庭支援)

直接お子さんとお会いすることもできませんので、家庭できる簡単な取り組みをお伝えしようと思いました。

目の動き、姿勢調節、手の操作など、一つの活動で全ての発達の根っこを育てるアプローチとして、平衡感覚を中心にした活動をお伝えしました。

それがバルンポリン(トランポリンの上にピーナッツ型バルーンを置いたもの)を紹介しました(対象児により安全性が求められますので、研究会にて実践例を聞いてください)。#バルンポリン

バルンポリン

バルンポリンのねらいとして、体幹機能の回復です。

トランポリンは取り組んでいたそうですが、あまりにも体幹機能が弱いと着地で体を支え切れず思ったような効果を発揮できません。

そこで、座っていても取り組める平衡感覚運動としてご紹介しました。

平衡感覚の改善により、姿勢調節機能と眼球運動の向上、さらにコアと言われる体幹機能も向上しやすいため、一挙3得くらいを見込めると思いお伝えしました。

発達支援と新たな課題

バルンポリンの取り組みなどもあり、ケーススタディの中での報告では、3か月ほどで姿勢保持が楽になっていったりしたそうです。

また、書字のスピードも上がり、宿題が早く終わらせられるようになっていたとの嬉しい報告をいただきました。

支援開始から9か月後の現在のご様子

できることと、できないことの狭間で、心の育ちから自分の居場所をさらにお子さん自身が考えることになりました。

自分とは何か?

そして、母としてもどのような距離感、立ち位置で子育てをしていくべきかが新たな課題、悩みとして検討する時間となりました。

※詳しい内容は個人情報のため控えさせていただきます。

一人で悩まないで

今回、お母さまからお子さんの写真の提供までいただきました。その理由は、お母さまご自身がずっと子育てで苦しんでいたからです。

専門家と呼ばれる関係機関に何度も相談に行ってはみたけれど、子どもの変化を感じられるまでの支援に出会えなかったそうです。

ほとんどの支援機関が「様子をみましょう」という言葉でした。

現状を教えてくれるものの、なぜこうなるのか、ではどうしたらよいのかまでお話いただくことはほとんどなかったそうです。

お母さまが前を見られるようになったのは、お子さんに何が起きているのか理由が分かり、では何をしたらよいのかまでの道しるべがあったからだとお話くださいました。

ぜひ、高次化理論による、「発達を読み取る眼」と「発達の意味性をつなぐ」仮説立てを身につけ、悩んでいるお母さんを一人にさせないでほしいと切に思います。
 
そのためにも、支援に関わる側がもっと、支援される側にたったアドバイスをしていかなければいけないと改めて思った次第です。

これからの支援で

今回のケースは「合理的配慮」に関しても考える内容が含まれていました。

書字指導の在り方、考え方について次のブログでお伝えしますので続きもお読みください。

宇佐川研 代表
植竹

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管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

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