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先輩ママ・支援者コラム
「発達のつまずき」とは?
『発達のつまずきを読み取るための視点ことコツ』~東京 宇佐川研(発達障害臨床研究会)5月度より~
~目次~
1 28期宇佐川研、スタートに向けて
2 第1章:そもそも「発達のつまずき」って何?
3 第2章:「発達につまずきがない」って?
4 第3章:「発達的視点」って?
5 第4章:「療育的視点」って?
6 第5章:読み取り力を磨くコツ
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目次
2018年度、第28期スタート
2018年度、第1回目の発達障害臨床研究会がスタートしました。
今年で28期目に突入いたしました。
今年度もよろしくお願いいたします^o^/
淑徳大学の宇佐川浩教授が残してくださった「感覚と運動の高次化理論」を基に、今年もケーススタディを中心に子どもたちから学んでいきたいと思います。
さて、今回は、年度当初ということもあり、
「発達のつまずき」
ということがどんなことなのか、会長の木村順より、そもそものことから学び直しました。
なぜ、このような初歩から学び直すのか?
それは、発達のつまずきのあるお子さんを支援する際に、
発達を読み解くための視点を正しくもっていないと、間違った支援、無理やりな支援、もはや支援とは呼べないことをやりかねないからです。
28期の第1回めとして、
「発達のつまずきを読みとるための視点とコツ」
として初歩から確認していきましょう。
第1章:そもそも「発達のつまずき」って何?
では、参加者から関わられているお子さんの「つまずき」について語っていただきました。
すると、
小3だけど、「漢字が全く読めない」
小1だけど、「いすに座っていられない」
5歳だけど、「形の弁別ができない」
小4だけど、「身体に触れられると激しく怒る」
小6だけど、「イラ立つと友達をたたいてしまう」
小2だけど、「好きなことを止られると暴れてしまう」
など、意見が出ました。
ランダムな意見でしたが、講師の木村は意図的にホワイトボードの右と左に意味づけるようにかき分けていました。
みなさん、もう気が付きましたが?
前半の3つは
「~できない」
と、考えられ、
後半3つは
「~をしでかす」
と大きく2つに整理していたのです。
その上で、それぞれの言葉の前と後ろに
「なんで」、、、、、、の?
と、
「なんで」「~できない」の?
「なんで」「~しでかす」の?
と見ていくことで、我々実践家がもたなければいけない、
2つの視点
があることを示しました。
それが、「発達的視点」と「療育的視点」です。
第2章:「発達につまずきがない」って?
「発達につまずきがない」、それが、いわゆる「健常児」の姿
木村流に述べると、別名:定型発達児「粒ぞろいの子」です。
①「◯ヶ月になったら、◯◯が出来る」といったことが当たり前に・自然にできるようになる子たち
例1:3~4ヶ月になったら、「首がすわる」ようになる
例2:1歳頃になったら「歩ける」ようになる
例3:2歳手前になったら、「両足とび」ができるようになる
例4:1歳頃には、一語文(有意味単語)が喋れるようになる
例5:2歳頃には、二語文が喋れるようになる
例6:2歳半ばには、「10数えたらおしまいね」というルールが解るようになる
例7:3歳前半には、「目・鼻・口程度のパーツを入れた人の顔」を描くようになる
例8:4歳頃には、「じゃんけんでの勝ち負けルール」が解るようになる
・
・
・
※これらが「標準発達」している子どもの姿
②だから、「年齢月齢」をそろえれば、発達状態の保育の課題が一定範囲におさまる子でもある。
③そして、「健常児向け」の保育園・幼稚園・普通学校は、粒ぞろいの子どもが対象となっている。
だから、「年齢(粒)をそろえておく」ことで、「一斉指導・集団活動」が可能(これはOK)
ただし、ここで”あぐらをかく”と・・・「一律指導・画一指導」になる(これはNG)
さらには、「一律・画一指導」でさえ伸びる子どもを、「健常児」と呼ぶ。
★慣れれば・ガマンすれば・頑張れば・繰り返せば・・・という危険な考え方
①「粒ぞろい」の子どもたちは、、、、
・「慣れさせれば」苦手なノリにも触れるようになる
・「ガマンさせれば」嫌いな野菜でもたべられるようになる
・「頑張らせれば」出来ない縄跳びもできるようになる
・「繰り返させれば」難しい繰り上がりや繰り下がりの計算も理解できるようになる
②「つぶぞろいではない」子どもたちにとっては・・・・・?
第3章:「発達的視点」って?
「発達的視点」って?、それは、
「なぜ、できないの?」「なぜ、しでかすの?」の「なぜ?」を考えようとする視点=「発達的視点」
であると、示されました。
「未学習」と「誤学習」が今の状態(障害像や症状)を作っている。
キーワード①「能動的学習力」という能力
少し掘り下げると、
いちいち教えなくても「ふつう」の環境があれば、いつの間にか「しぜんに」、どんどん新しいことを学んでいくことを標準発達(健常)児と呼ぶことにします。
もし、脳のはたらきに問題が生じていたり、脳に損傷があったりした際に、
「ふつう」の環境だけでは、いつまで経っても「しぜんに」は身についていかない子どものことを
「発達につまずきのある子」と考え、
その結果、「学ばずじまい」の発達の課題が年齢とともに膨れ上がっていく状態に陥っていきやすい。
これを「未学習」と呼びます。
親は、指導者(教師・保育士・療育者)から、わが子の「未学習」がどれほどのものなのかを「解説してもらう」ことで、わが子の「なぜ?」が見えてくる。
キーワード②「能動的修正力」
いちいち教えなくても「ふつう」の環境があれば、いつの間にか「しぜんに」、どんどん新しいことを学んでいくことを標準発達(健常)児と呼ぶことにします。
次に、もし、脳のはたらきに問題が生じていたり、脳に損傷があったりした際に、
「ふつう」の環境だけでは、いつまで経っても「しぜんに」は身についていかない子どものことを「発達につまずきのある子」という。
その結果、「学び直さず」発達の課題が年齢とともに膨れ上がっていく状態に陥っていきやすい。これを「誤学習」と呼びます。
親は、指導者(教師・保育士・療育者)から、わが子の「誤学習」がどれほどのものなのかを「解説してもらう」ことで、わが子の「なぜ?」が見えてくる。
キーワード③「多様性」という能力
結果として、運動や行動、言葉、コミュニケーション、社会性などの発達の諸領域において、「あれも出来る & これも出来る」という可能性が削り取られていく。
それは、「出来ないこと」「しでかしてしまうこと」が多くなるだけではなく、「そのやり方でしか出来ない」という「多様性の欠如」の状態に陥ってしまう。
「未学習」と「誤学習」の積み重ねの中で、その子本人も、その子を育てていくる親も「被害」に遭ってしまうのが「障害」と考え、実践家が適切な知識を持ち得ることを強くうったえている。
『3章 まとめ』
「発達支援」や「特別支援教育」、「療育」という取り組みとは?
A:かよわき「能動的学習力」を最大限に引き出していくことで、
「未学習」=学ばずじまいの発達課題を最小限にとどめる営み
B:かよわき「能動的修正力」を最大限に引き出していくことで、
「誤学習」=学び誤りの発達課題を最大限に書き直す営み
C:この2つの取り組みで、「多様性」を最大限に育てていく営み
ではないかと木村は考えている。
第4章:「療育的視点」って
「なぜ、できないの?/なぜ、しでかすの?」の「なぜ?」
を考えようとする視点(その2)=「療育的視点」
①事実&実態からの出発 「この子」の生活・発達・症状の実態把握・・・「読み取り」ができること
②対象者の実態把握 (=「4つの軸」からの情報収集)
1)いつ頃から出始めたのか? ・・・時間軸
2)どこで、状態像はひどくなったのか? ・・・空間軸
3)誰との関係では、状態像はひどくなるのだろうか? ・・・対人関係軸
4)どういった状況で状態像はひどくなるの? ・・・状況軸
③「仮説」を立てながら実践していく ~読み取りに基づく「真犯人探し」
Q1 この絵、何の絵?
Q2 絵の全体像が分かるためには、まずはどこのピースがあれば良い?
Q3 再度質問です。 この絵、何の絵?
Q4 まだ、集めきれていないピースの図柄を書き入れてみてください。
※でも、この絵についての既存の「知識」がなかったら全体のピースがそろったとしても解らないまま
→この子、この人、なぜ☓☓ができないの? どうして◯◯してしまうの?
→情報不足では、何が何だかさっぱり分からない
→「必要」な情報を集めてくることが求められる
※「仮説」なき実践は、「思い込み」「やりっぱなし」「自己満足」実践におちいりやすい!
④仮説立て=「この子」を理解(≒アセスメント)していく際の登竜門
1)原因仮説 ・・・・・・「なぜ◯◯ができないのか・なぜ☓☓をしてしまうのか」の原因
2)要因仮説 ・・・・・・「なぜ◯◯ができないのか・なぜ☓☓をしてしまうのか」の要因
3)経過仮説 ・・・・・・「いかにして、この状態に至ったのか」の経緯や経過
4)方法仮説 ・・・・・・「いかにして、症状を改善し発達を促していくか」という方法
5)効果仮説 ・・・・・・「その方法で、何の改善がどこまで期待できるか」という効果
6)予後予測 ・・・・・・「将来的には、どのように育っていくのか」という予測
※ 「思い込み」や「自己満足」におちいらないためにも「既存の知識」が必要
→各種の発達論・症状論(疾患論)・方法論(技法論)
⑤ 担当している”この子”を読み解いていく(アセスメントしていく)ためにも、仮説の1)2)3)4)を言語化していくことが大切
第5章:読み取り力を磨くコツの一つが「言語化」!
子どもたちの良き「読み取り手」になるために
1 「心」は伝わるもの? ~こんなこと、考えてみてください
1)子どもの「気持ち」を、話し言葉(音声言語)以外の情報で読みとることができますよね。
ただし、テレパシーは使えませんよね? 凡人だから!
では、話し言葉以外の何を「手がかり」にしていますか?
① 表情
② 視線・まなざし
③ 声(トーン、大きさ)
④ 動作・しぐさ・行動
⑤ 姿勢・身体の軸の傾き
⑥ バイタルサイン(心拍数・血色・呼吸・体温など)
2)関わる大人&指導者側の心構えとして
① これらを、きめ細かく読み取り、適切に対応できる人が
●良い保育士、指導者、教師、、、
●上手なセラピスト(MT・OT・PT・ST・心理、、、)、保育士、看護師、医師
●子育ての上手な(母)親、介護、介助の上手な家族
② 保育・教育・療育・子育て、介護などのレベルを高めていくためにも、関わる側の大人が、「良き読み取り手」になることが大切。
3) 指導者の場合は、「努力」すべきポイント~親御さんやご家族の方は参考までに
=実践家・臨床家は、仕事上の「義務」
①これらの読みとりの力量を「カン・コツ」と言ってしまえば、経験こそがモノを言う「職人芸」の世界になってしまう。
②ましてや「実践(臨床)的センス」の有無で片付けてしまえば、私たちの大半は、実践(臨床)家失格かも・・・・・・・。
→「職人芸」で終わらせしまうのではなく、「専門職」の世界にしていくには、
日々の実践(臨床)を「言語化」していく努力が大切になっててきます。
4)しかし、「実践力」が低かったり「基礎的な知識」がないと不本意ながらも「誤解者」となってしまう可能性あり
=発達につまずきや障害があると、①~⑤の表出に崩れや歪みを生じやすい。
→指導者(や親、周りの大人)が、対象となる子どもの状態を読み誤りやすくなる。
◆もう一つのコツは、実践力の高い人からの「盗み取り(≒学び)」
※ただしそれは、ノウハウ(Know how)ではなくノウファイ(Know why)
・ノウハウ ・・・小手先のテクニックでとどまってしまうもの
・ノウファイ・・・長年の実践と学習でたくわえた実践的な「判断基準」
◎ケーススタディ=模擬実践
実践場面は、判断基準の連続です。その判断基準を最短距離で身につけていく場が「ケーススタディ」
ケーススタディでは、例え自分が事例ケースを提案していなくとも、自分が担当だったらどうするかという仮説を立てて考えられる場です。
その中で、周りの方の発達臨床的視点を教わったり、その際の根拠の捉え方、根拠となるしぐさの評価の視点など、多岐にわたる学びを得られます。
ただ、ケーススタディを行う際は、スーパーバイズできるレベルの指導者がいないと、評価の視点を深めることが難しいことも事実です。
28年間ケーススタディにこだわり、実践にこだわり続ける発達障害臨床研究会(通称:宇佐川研)だから伝えられる学びがあります。
ぜひ、全国で開催している宇佐川研にご参加いただき、実践力に磨きをかけ、子どもたちの発達のつまずきにいち早く気づき、適切な支援を、療育を実践していただきたく思います。
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