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2歳児の言語発達と私の誕生
目次
2歳児の言語発達の不思議さ
1歳児と3歳児の言語発達
1歳児と3歳児の言語発達は観察していてわかりやすいところがあります。
1歳児は自分の身体の動きに気付き出し、動詞をよく使うようになります。
そして、他者の様々な行為をマネ(模倣)しだします。「マネ」はしても「フリ」をすることはまだないのです。
フリとは、自分は自分ではない誰かを宣言することであり、それには自分を知り、「ママやパパ」など身近な人を通して他者を知ることが必要となります。
フリをするにはそれだけ高度な自己認識が必要なのです。
1歳半ころ、鏡に写る自分を自己として認識し出します。
そこに至るには、周りの大人の言動がとても大切です。
泣いている子に「えーん、えーん、悲しいね」や、食べている子に「パクパク、おいしいね」など叙述することで、子どもは行為や感情を知覚していき「自分」を知っていくのです。
さらに、○○ちゃんのシャツなど、自分の名前と自分の所有物などを媒介として自己を自己として捉えていきます。
自己の発見と、象徴能力の芽生えの重なりにより、「自己」と「他者」の世界が誕生するのです。
1歳の終わり頃になると、同一視ができるようになります。
例えば、お風呂で頭を洗ってもらっている時に、髪の毛をオールバックにして、「イマ、トータン(今、僕はお父さん)」と言ってみたり、数歳上のお兄ちゃんのカバンをしょって、お兄ちゃんになりきって「ヨウチエン、イク」のようにフリ遊びに参加するようになります。
3歳児は、象徴機能もかなり育ち、ごっこ遊びなど仲間との関係性での言葉が増えていきます。
とても自己と他者が明確であり、さらに役割などもくっきりはっきりと見てとれます。
2歳児の言語発達 ~思い出す・思い浮かべる力~
では2歳児は。
実は2歳児の言葉に関する研究論文はとても少ないそうです。
そのような中、奈良女子大学名誉教授の麻生武先生のご講義を京都発達研究会さんにて伺ってきました。
2歳児は「私」が出現してくる時期です。
象徴能力(目の前に無いものを思い浮かべる力)を身につけ、3語や4語の多語発話の世界に足を踏み入れ出します。
子どもたちの心は「今、ここ」を超えた想像の世界に羽ばたき出します。
人称的世界や時制(現在・過去・未来の言い表し)が生まれだす時期とも言えますね。
記憶が伸び、エピソード記憶による表現が増えていきます。
例えば「私があの時○○していた」など。
まだおぼろげな時制のため、「今」と「さっき」のような表現も多いです。
言語的思考が芽生え出すことにより、自分の知っている言葉を、生活のシチュエーションなどにより、「枠」や「カテゴリー」に当てはめて使っていきます。
それは、まだ現実の世界と想像の世界を切り分けて使っているわけではないので、現実の世界を把握するために想像力が必要なのです。
「父親が会社に行っていて今いない」という現実を理解するためには、不在の「父親」をイメージし、見たことのない場所の「会社」を想像する力が必要なのです。
現実を理解するために想像力を働きはじめるのです。
「コミュニケーションとしてのことば」と「思考としてのことば」の育ちがあります。
「コミュニケーションとしてのことば」は、他者への影響によって「ことば」を発することを学びます。
ことばを発することで周囲からフィードバックを受け、実用的なことばの使い方を習得していきます。
例えば、「何歳?」と聞かれて親から「2歳」と答えることを教わり、「2歳」と発すると、「すごいねー」と褒められると、会う人会う人に自分から「2歳、2歳」と語り、褒めてもらおうとするなどです。
私の誕生
2歳児は他者の返答を内面化していき、自己内対話を生み出していく時期でもあります。
2歳児はとにかく、ことばを投げかけていくこと自体がとても大切であり、自分の存在を見出していくための行動とも捉えられます。
「思考としてのことば」は、他者のことばを媒介として思考をします。
例えば、「パパ嫌い」ということばが、お父さんへ与える効果を利用して、お父さんとの関係を操作しようとします。
「パパ嫌い」ということばから、「嫌い」という観念(意味合いを捉える)を形成し始めます。
「パパ嫌い」から、「パパとは行かない」という二つの観念(意味合い)をつなぎ合わせ始めていきます。
まとめ
1歳の言語発達は、名詞や動詞といったものや行為には名前があることを知っていきます。1歳半をすぎたあたりから、少しずつ、その言葉を組み合わせて、「今」を通して周りの人とのつながりをつくりだします。
0歳、1歳児の時に、お子さんが見つめている先のものを言葉で表現したり、気持ちを代弁してあげたりと、何でもない時に手をかけてあげることが大切です。例え言葉を発していなくても、理解していくことばは広がりますので。
2歳は記憶の成長に伴い、見えない世界も取り込みつつ、自己の感覚・情動・感情を親しい人との関係性を通して表出していきます。言葉を使っていきながら中身を備わっていく感じです。さらに、はずかしさの芽生えなどを文化的背景と結びつけ、形容詞など状況を表すことで、自己の存在をしっかりと作ろうとするようです。
「未熟さであるがゆえの適応」
という言葉を京都発達研究会の先生は語られていました。未熟な存在だからこそ、じぃっとみて大人を観察し、どのように振舞えば良いのか考え、他者を少しずつ取り入れ、自分を出しつつ適応しているのだと考えています。
2歳児は手がかかるなど言われますが、けな気に一生懸命世の中に適応しようとしている2歳児の姿が愛らしく見えてきましたら嬉しいです。
参考、引用文献
「乳幼児の心理:コミュニケーションと自我の発達」麻生武 (サイエンス社2002)
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