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先輩ママ・支援者コラム
『神が宿る時 』初開催 三重 宇佐川研より
『神が宿る時 』初開催 三重 宇佐川研より
台風12号が、ど真ん中に上陸した7月29日に、三重県でははじめての研究会を開催いたしました。
研究会当日の夜中に、津市を台風が通過したため、明け方は街全体が停電。信号も一切灯りが消えたそうです。
そのような中でしたが、研究会開始数時間前に会場周辺の電気が回復。
さすが伊勢神宮のある三重県。神様が集まる県だけあり、私たちの想いを叶えてくださったようで、なんとか開催することができました。
今回は特別支援学校の先生が会場スタッフをしてくださいました。
誰に言われたわけでもなく、「台風の中お疲れ様」とウェルカムボードをサラサラっと書いてくださるなど、日頃の相手を想う心が随所に現れる空間となりました。
大阪方面からは電車が動かず参加できなかった先生もいらっしゃいましたが、少し開始時間を遅らせた程度で、ほぼ満席の状態で始めることができました。
このような天候でも集まってくださる熱心な実践家ですので、高次化理論の一つ一つの考え方を熱心に聞いてくださいました。
初開催ですので、高次化理論における「子どもを捉える眼」について、事例を交えながらお伝えしました。
高次化理論では、読み取る視点として宇佐川浩先生の「発達臨床的子ども理解」の考え方をお伝えしています。
つまずきのある子を読み取るために、三つの視点を大切にしています。
①おおよその発達段階(認知発達を中心に)を読み取ること。
②発達の全体性を読み取ること。
③発達の意味性をつなぎ合わせること。
この、①②③を組み合わせて読み解いていくと、的を射た仮説や目標となります。
しかしながら、特に発達の意味性をつなぐというのは、最初はとても難しいものです。
たとえば、「目の周りで、手をヒラヒラさせている子」がいたとします。
この一つのしぐさを見た瞬間に、宇佐川研で長年学んできている人からすると、あれと、あれと、あれがつながるから、アプローチとしては、ブランコから入ろうか^_^
などのようにつながります。
あれと?あれと?あれ?
私も初めてこの研究会に来た時、宇佐川先生が一瞬の映像を見ただけで、
「あー、ボクはだいたい分かりました」
と言われて、ビックリしたことを思い出します。高次化理論を学んでいくと、これが普通のこととなります。
事例の、手をヒラヒラさせる仕草からは、
①手をヒラヒラさせているのは、周辺視遊びをしているのだろう。
②周辺視遊びをしているということは、まだ中心視を使って見る力が育ちきっていないだろう。
③以上のことから、眼球運動が未発達だろう。 眼球運動がうまく育っていないと、読み書きや視覚性の記憶にもつまずきが予想される。
④眼球運動が未発達ということは、平衡感覚につまずきがある可能性が高い。
⑤平衡感覚につまずきがあるということは、脳の覚醒も低いことが多い(低覚醒)。また、自律神経の働きも良くないことが多いので、体温調節が難しかったり、汗をかきにくい子だったりすることもある。
⑥平衡感覚につまずきがあるということは、姿勢調節もうまくいっていない可能性が高い。姿勢調節がうまくいかないということは、姿勢が崩れやすいかもしれない。
⑦姿勢が崩れやすいとうことは、集中して学べる時間も短いだろう。空間を捉えるのも苦手かもしれない(眼球運動も関係あり)。視空間認知につまずきがあるということは、やはり文字の読み書きにつまずきが出やすい。
このようなつながりから、平衡感覚を改善していけるようなアプローチが必要ではないか!と仮説立てされます。
そこで、ブランコ乗りながら公園の色探しなどして遊んでみたら楽しみつつ、覚醒も、姿勢も、目の動かし方も改善しやすいのではないか?とつながっていったりします。
あらゆる発達に対して、このように発達の意味をつなぎ合わせながら、ハウツーではなく、その子にとり一番負担が少なく、楽しく、そして学習効果が高まるアプローチを模索するのです。
そして、その発達的意味を知るために、基礎感覚とは何か?
基礎感覚につまずきがあるということの意味を考察しました。
今回は、初回ということで、「触覚」が果たす大きな役割を何度も何度もお伝えしました。
特に、触覚のつまずきは絶対に放っておいてはいけない!
触覚防衛は絶対に放ってはいけないといつも強く語っています。
なぜ、宇佐川研は、触覚防衛反応が出ているお子さんを絶対に放っておいてはいけないのか!
どれほどまでに命に関わり、生き辛さに直結するのかを嫌というほど知っているからです。
29年間のケーススタディを通して、触覚防衛を放っておいたがために、思春期に入り、自傷で視力を失ってしまったお子さん。
顔の形が変わるまで自傷してしまったお子さん。
他害が強くなり、両親と一緒に暮らせなくなってしまったお子さん。
たくさんの、辛い思いをしてきている子どもたち、その家族を見てきているからです。
触覚防衛反応は、頭で考えて嫌だから症状が出るとかではありません。生理的な反応として、自律神経症状として出てきます。
なぜなら自分の命を守るために働く反応だからです。
しかしながら、本来なら働かなくても良い時にも反応が出てしまう(抑制が効かない)ので、生き辛さとつながります。
少し想像してみてください。
触れられただけで、針でツンツンされているように感じるとしたら。
そうなれば、いつ触れられるか分からないような人混みや、どんな行動をとるのか分からない初めて会う人との出会いなどは緊張の連続となります。
自分の身を守ることに必死であり、触れられないようにするために、人との距離を自然ととったり、攻撃的になったり、いつもソワソワとしたりとなるはずです。
そのような不快な刺激を、慣れれば改善するという発想そのものがどんなに辛い思いをさせるのか理解が必要です。
そうして、無理解からくる指導を積み重ねた結果、叱られることが積み上がり、自尊感情が育たずじまいとなり、思春期に爆発したり引きこもってしまったりすることにつながりやすいのです。
全てが触覚防衛のせいとは言い切れませんが、生活を困難にすることには変わりありません。
いつ触れられるか気になり、学校へ行っても、いつもソワソワと落ち着かない姿が目立つことになります。
また、自分の体を捉えることにも弱さが出ますので、外界から学び取ることや、人との共感性も育ちにくくなります。
逆を言えば、触覚防衛が改善すると、ものすごく視線が合いやすくなったり、疲れにくい体になったりします。
落ち着いて生活しやすくなるので、優しい言葉が増えたりする子もいます。
改善の視点としては、脳の中でも、大脳新皮質をお子さんが使うような関わり方。
「識別系を使うアプローチ」というのがキーワードになります。
脳の機能として、識別系を使っている時(高次な脳を使っている時)は、下位の脳は抑制がかかるという仕組みがあります。
識別的に触覚を使わせることで、脳幹レベルで反応してしまう、原始系と言われる方の反応に抑制がかかるようにすることが改善の要です。
また、識別系を働かせるには、脳の覚醒レベルが大きく関わります。低覚醒の状態でアプローチしても、ほとんど反応を引き出せないからです。
平衡感覚を使った運動を取り入れ、脳を目覚めさせたところで、識別的な触覚を使う活動をする事で、触覚防衛反応を改善していきやすくなるのです。
このような解説は当然しつつ、臨床場面の動画を用いて、どのしぐさが原始系にスイッチが入ってしまっている時の様子なのか読み取りの練習も行いました。
いくら知識があったとしても、目の前のお子さんから読み取れなければ意味が無いからです。
実践力を高めるには、臨床しかありません。
それこそがケーススタディです。
総合的な学びを得られるのがケーススタディだからこそ、宇佐川研がケーススタディにこだわり続けているのです。
今回もたくさんのアンケート結果をいただきました。
宇佐川研に初めて参加してみて、今まで一緒懸命取り組んできたつもりでいたが、読み取る視点をもっていなければ、独りよがりの実践になっていた。
知っていることと、知らないことの差が、これほどまで大きいのか!知らないということの怖さを感じました。
基礎感覚の理解なくして、発達支援とは呼べない!
など、多数のご意見をいただきました。
宇佐川研が実践にこだわっていること、結果にこだわっていることの意味を体感していただけたと思います。
そして、今回は三重県での開催ということで、お伊勢参りをさせていただきました。
皇后陛下がいらっしゃる前日に参拝させていただいたので、ものすごくエネルギーが高まっていたように感じました。
全国の子どもたちに、適切な支援が届くように、私たち研究会がこれまで続けられてきたことを、
「おかげさまで」
の感謝の気持ちを代表してお伝えさせていただきました^_^
祈祷していただいたお札は会長の木村先生の事務所に飾らせていただいております。
発達支援において、知ってさえいれば済むことが山ほどあります。
でも、知らないからやらない。
やらないから子どもたちは困り続けています。
ぜひとも、ほんの少しで良いので、私たち宇佐川研が発信していることに耳を傾けてみてください。
きっと、先生待っていたよ^_^
という笑顔を見せてくれると思います。
宇佐川研
植竹
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