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『発達の視点② 防衛反応』

目次

防衛反応とは

触覚の過敏さ、聴覚の過敏さをもつ子が増えているように思います。

感覚統合では、触覚防衛反応、聴覚防衛反応と言います。

過敏さという表現は、まるで感じすぎるのだから、感じすぎるあなたが我慢すれば良いなどの誤解を生み出します。

けっして育て方のせいでなるわけではありませんし、お子さんが悪いわけではありません。

では、防衛反応とは何を防衛しているのか? それは自分の命です。 命を守るための反応なのです。

我々も急にナイフを突きつけられたりしたら、身を守るために様々な防衛を図ると思います。

命を守る瞬間的な反応が常に出てしまっているのが防衛反応を示す子の状態像です。

防衛反応は触覚と聴覚に現れます。

触覚面では、人に触れられるだけで痛いと感じてしまったり、気持ちが悪いと感じてしまうなど感じ方は様々です。

聴覚面では、ほとんどの人には聞こえない音域が聞こえたり、一般的にはわずかな音に感じられる音に驚くように感じていたりとします。

どちらにしても、脳幹レベルにおいて、危険、命に関わる刺激として感じられるため、瞬間的に命を守ろうとする反応が出ます。

例えば、触覚であれば、友達から触れられた瞬間に友達を引っ掻いてしまったり、叩いてしまったりとすることも。

ここで、道徳律の指導はほとんど意味をなさないばかりか、お子さんの心を傷つけるばかりです。

なぜなら、叩きたくて叩いている子はいないからです。 生きるための反応として手が出てしまっています。

叱ることよりも、手を出さなくてもよい関わり方や環境設定の方が大切です。

では、防衛反応が出てしまうお子さんは配慮することだけしかできないのか?というとそうではありません。

防衛反応は時間はかかりますが改善していくことができます。

防衛反応が起こる仕組みを知ることが非常に大切です。

まず、脳みそは進化の過程から三層構造になっていることはよく知られていると思います。

1階にあたる脳幹は、呼吸など生命を維持するための脳です。

続いて2階にあたる、大脳辺縁系は感情など情動を司る脳。

そして、3階はヒトだからこそ進化したと言われる大脳新皮質で、思考や理性などを司る脳です。

それぞれの階層で役割が違うのです。 3階にあたる大脳新皮質にしっかりと感覚情報が届いている際は、下の階にあたる脳機能はブレーキ、抑制がかかるようになっています。

防衛反応とは違いますが、お酒を飲み過ぎてしまい、本当はやってはいけないことをついしてしまいやすいのは、飲酒により大脳新皮質の働きが落ち、抑制がかからない状態となるから。

これを脱抑制と言います。

大脳新皮質の働きが落ちると、情動に任せた行動となってしまい、行動にブレーキがかからない状態になってしまうからです。

話を防衛反応に戻します。 防衛反応は脳幹レベルでの反応です。 触覚などの感覚情報が3階までしっかり届かずに、途中で途切れてしまうような届き方になっているような状態といえます。

そこで、しっかり大脳新皮質まで感覚情報が届くようにはたらきかける事が改善へのアプローチとなります。

例えば、お子さんに触れるなら、まず言葉掛けをしたり、これから触れるよ

という仕草を伝え、注意を向けさせた状態で、広い面で均一に圧がかかるようにしっかりと触れることが大切。

しっかり触れることで、大脳新皮質まで感覚情報が届きやすくなります。

逆に、ペタペタや、サワサワと触れるような触れ方は防衛反応を強めるような関わりになります。

また、脳の活動性と言いますか、覚醒が低い状態は防衛反応が出やすくなります。

お酒の例でも分かる通り、脳の覚醒が低いと大脳新皮質が働きにくい状態となります。

そうなると、抑制系がはたらきにくいということになるからです。

そこで、脳の覚醒を高める、平衡感覚系の遊びをすることも防衛反応の改善に役立ちます。

跳ぶ、回る、揺れるなどの遊びです。 急激な加速度刺激は脳の活動性を一気に高めるからです。

ジェットコースター効果とも呼ばれるものです。 だから、防衛反応が出やすいお子さんには、なるべく午前中にブランコやトランポリンなどの遊びを取り入れることも大切です。

防衛反応の改善は脳の中に新しい神経経路をつなぐ作業となりますので、脳の覚醒を高める遊びや、関わり方の頻度と期間を一定期間しっかりとる事が大切です。

我々の臨床では、理想は毎日。少なくとも、週に4日以上、3か月は最低必要と考えています。

脳神経を新たにつなぎ、安定するには最低でも3か月から半年は必要になるからです。

具体的な関わり方は、また今後お伝えして参ります。

理解からの支援を進めて参りましょう。

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