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先輩ママ・支援者コラム
発達臨床(支援)とは山登りのようなもの
目次
【どの山に登ろうとしているのか?】
臨床を続けていると、様々な実践報告がみられます。何をどのくらい続けて、どのような成果が得られたのかはもちろん大切です。
しかしながら、もっと大切なことは、そもそもその結果はねらった成果であったのかということを常に問い続けてほしいと思います。さもないと、やりっ放しの実践になりかねないからです。
また逆に、ハウツーだけの実践になっていないかも気を付けていきたい視点です。一見同じことをしている実践でも、相手が違えばねらいも変わります。
また、同じ相手でもその日の状態により全く同じことをするものではありません。
実践をしていく際に、まず大切にして欲しいことがあります。それは、どの山に目の前のお子さんと登ろうとしているのかを明確にすることです。登る山が違えば、準備物が違います。
さらに、登る手順や登り方もそれぞれ違います。そして、登るまでの道筋も1つではなく、何通りもあってもよいのだと思います。
お子さんの体調や、状態に合わせていく通りもある登り方の中から、最適な登り方、道を選択していければよいかと思います。
しかしながら、新しいケースを担当した時は、登る山は決められても、道筋は常に未開の道に感じることかと思います。だからこそここでケーススタディが役に立つのです。
まだ登ったことのない山も、他人のケースを通して、登り方を疑似体験させてもらっているのです。他人のケースであっても、自分のケースとして真剣に考え、もっと違う登り方はないのか?本当にこの山をのぼるべきなのか?常に「?」を投げかけることで、最適な道や方法を自分で見つけ出すことができてくるのです。
道はまだつくられていなかったとしても、ケーススタディを繰り返すことで、進むべき道を見つけるためのコンパスを手にすることができるのです。
そのコンパスを手にするためには、ケーススタディを通して、発達の意味性をつなぐ視点、目の前で起こっている出来事の背景を読み取ろうとする視点が必要です。
そのためには、さらに様々な発達の知識が必要です。だからこそ、私たち支援者は学び続ける必要があるのだと思います。知識が少ない時は、目の前の出来事から立てられる仮説も少なくなります。知識が増えることで様々な視点から仮説を立て、検証していけるからです。
【優れた登山家と一緒に登る】
優れた登山家と登ると、いろいろな気づきがさらに増えます。なぜそのようなルートを通るのか?なぜその装備で挑むのかなど、自分が考えた方略と違った道筋が示されます。
それが、ケーススタディにおけるスーパーバイズ(以下SV)を得るということです。SVは山の頂上へ登るための道筋を鳥瞰図的に示してくれます。
森林の中で道に迷うビギナーを、鳥がふもとから一気に頂上へ飛んでいくかのごとく、進むべき道を示してくれます。なぜなら、SVをする者たちは、一度その山を登ったことがあるからです。
ベテランになればなるほど、様々な登り方を知っています。さらに相手に合わせた登り方も知っているので、ケーススタディに臨む際は、なぜその道を選んだのかなど、「なぜ?」を常に質問し、評価のポイントと、選択に至る理由を知る努力が大切です。
【そして登り続けること】
登り方を知ったのなら、あとはひたすら登り続けるのみです。時々道を振り返り、そして進むべき道を確認してください。時には引き返すこともあるでしょう。その作業が、検証作業です。
うまく進むことができたなら、何がうまくいった要員だったのか確認してみましょう。うまくいかない時こそチャンスです。それは、新しい道を見つける前ぶれだからです。
ほんの数歩先に新しい道が開けるので、あきらめずに進み、難しい時は進み方を質問してでも進み続けてみてください。あんなに難しいと思ったことも、一度できてしまうと二度目はやるべきことを淡々とすればよいことに気づけるからです。
【登り方を教えること】
一度山に登ることができたら、次はあなたが、その山の登り方を教える番です。何がどのように難しくて、どのようなところにコツが必要だったのかを、再現性が高くなるように伝えることです。伝えた先の仲間が、あなたと同じように登ることができたのなら、あなたの力は本物です。
もし、仲間がうまく登れないとしたら、それはあなたが見落としている視点がどこかにあるからです。教えることで、さらにあなたの力が高まります。
【登山家魂】
登山は一度出発したら、途中でやめることはできません。遭難してしまえば命を失います。しかもあなたは、常に初めて山に登る子どもたちと登るのです。
あなたがあきらめてしまえば、子どもたちはそこで道に迷ってしまうのです。命の危険にさらされることもあるかもしれません。
どんなに険しい道でも、私たちから手を放すことはないことを伝え、常に先頭を歩き、子どもたちへの雨風を防いでいく必要があります。
非常に険しい道ではありますが、険しいからこそ、頂上から見る景色はきっと美しいものだと思います。だからまた登りたくなるのです。まだ見ぬ頂上を目指してこれからも登り続けましょう。一緒に手をつなぎ。
宇佐川研代表
植竹安彦
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