保育士が発達支援のためにできること~つぶやき~

保育士が発達支援のためにできること~つぶやき~

保育園は療育施設とは違い、基本は集団生活。発達に凸凹のあるお子さんは、生活の流れにのれない、集団の活動にうまく参加できないなどで、「困ったお子さん」と捉えられがちです。

松葉づえをついていたり、眼鏡をかけていたりしたら、そのお子さんが今どこに弱さを抱えているのか、どう支援していったらいいのかわかりやすいですが、発達に凸凹のあるお子さん達は、見た目では、発達のつまずきどころが分かりづらい。

なので、「できるでしょ」「できるはず」と捉えられがちです。

けれども、実は本人も、本人なりに一生懸命やっている。大人に褒められたいし、いい子でいたい。
なのに「◯◯できない」。何かをする度に叱られてしまう。

でも、それは…。

周囲の大人が、その行動の理由をさぐり、環境を調整してあげることで、叱らずに済んだり、本人の満足のいく活動が出来たり、他の人に迷惑をかけることなく過ごすことができるようになります。

例えばこんなトラブル 〜セロテープをお友だちに貸せないのは、なぜ?


お友だちと一緒の製作活動。
道具…セロテープを仲良く「一緒に」使えず、すぐトラブルになってしまうお子さんがいました。

一緒にセロテープを使いに来たお友達を叩く、噛みつく、「僕が一番」「僕のだよ!」と怒っています。

そんな時、他害行為として保育士から「叩いちゃだめ!」「皆のものでしょ!」と叱られ、「ごめんなさい」と謝ることを要求されることが多いと思います。

やってしまったお子さんは、(理解の進んだお子さんであれば)「またやっちゃった」「また叱られちゃった」「僕ってどうして…」と自己肯定感を失くしていきます。


行動の理由を考える

もちろん、叩く、噛みつくのは、よくない行為です。
でも、行動には必ず理由があるはず。

大人が「一緒に使えないのは何で?」「叩いたのは、噛みついたのは何で?」と考えることが大切です。

一つの行動には、様々な理由が推測されます。

叩いたり、噛みついたりするのは、触覚防衛反応(何かが近づくと攻撃して自分を守ろうとする原始的な反応)が出ているのかもしれない。

固有覚(関節、筋、腱の動きなどを感知する感覚)が鈍麻で、力加減が難しいのかもしれない。

「僕が」になってしまうのは、心の理論(他者の心を類推し、理解する能力)が獲得できていないために、相手の立場に立って考えられないのかもしれない。

ASD傾向があって「自分が一番」のこだわりがあるかもしれない。

全体視知覚(空間全体を捉える力)が弱くて、自分の目の前しか見えず、他の人が突然来ることに驚いてしまうのかもしれない。

「叩く、噛み付く」といっても様々な理由が推測でき、それを見極める力が大人側には求められるのです。


理由がわかれば支援ができる


行動の理由がわかってくると、この行動を予防あるいは回数を減らす対応ができます。

例えば、製作すること自体が目的、あるいは自由遊びで個々が遊びに没頭することが目的なら、場所を離す、時間をずらすことや、個別活動にして感覚面でのトラブルを回避する。

どうしても共有しなければならない時は、言葉で理解できる子であれば言葉で、そうでなければ絵で、「これはお友達も使います。」と予告し、大人が側にいて、他の人が使いそうになったら「◯◯ちゃんが使うね」「◯◯君が側に来ているよ」と声をかける。

セロテープは本人の近くに置くと、パーソナルスペースを侵略される形になってしまうので、少し離して置く、などです。
感覚面でのトラブルやこだわりを環境で緩和して、未発達な部分を補っていきます。


「困った子」を作り出しているのは大人側である、という自覚を持つ

些細な事ですが、こういう小さな積み重ねで、お子さんが安心して活動に取り組めるようになり、本人の自信、「できる!できた!」に繋がっていきます。
他のお子さんから「◯◯君は、いつも叩く」「いつも叱られることばかりする」というマイナス評価も無くす、あるいは減らすことで、良好な関係性づくりにつながります。

逆に、大人が行動の理由を考えずに、その行動だけを修正しようと、叱ったり、注意したりを続けると、製作が嫌いになり、誘っても拒否するようになります(自己防衛)。
積み重なると、製作の時間になると部屋を出てふらふらすることもあるでしょう。
そのお子さんの性格によっては、製作の時間に大騒ぎして妨害するようになってしまうかもしれません。
他のお子さんからも「◯◯君とは遊びたくない」と言われてしまうかもしれません。

…マイナス行動や「できない」は、もしかしたら私たち大人の働きかけが作り出しているかもしれないのです。


だから、保育士として学び続ける


だからこそ、私たち保育士は、お子さんの行動の理由を考えて対応していかなければならないと思っています。

けれども、まだまだ保育業界では、宇佐川研が伝えている発達のしくみや感覚面の知識はほとんど知られていません。行動の理由となる身体のしくみを知らずに、叱ったり、注意してしまうことも多々あるのが現実です。

大人側が知識を得ることで、子どもを叱るのではなく、理解し・伸ばしていく存在となることができます。

自分も、保育士として大変未熟です。
けれども一生懸命学び、学んだことを園内にお伝えして、1人でも多くのお子さんの自信と笑顔を増やしていきたいと思います。

それが、今、私のできること、やりたいこと、やらなければならないこと、だと思っています。

最後に、保育士として日々を重ねる中で、大切にしている言葉を…。

いい子に育つには いい子の扱いをされること。
人を信じる子に育つには 人から信じられること。
支えあえる子に育つには 支えてもらうこと。
この世に失敗が無いと思えるのは 失敗を責められないこと。

(一般社団法人チャイルドフットラボ代表理事 藤原里美先生)



子どもたちの可能性を引き出せる保育士となれるよう、今日も学びを続けます。

※一般社団法人チャイルドフットラボと宇佐川研(発達障害臨床研究会)は直接の関係はありません。イチ保育士として藤原先生のお言葉が心に響いたため、お借りしています。

はじめまして、保育士「にゃー。」です。

「にゃー。」は私が日常よく発する言葉です。身体にも心にも力が入りがちな人間なので、頑張る時に「ぐっ」と力が入りすぎるのを防ぐために「にゃー」と言って力をふにゃーっと抜いています。怒った気分の時も「そんなのひどい!」と言うよりも「まったくひどいにゃー」と言うと和らぎます。また、疲れてしまった時につくため息も「はぁっ」よりも「にゃー」にした方が、ユーモアが混ざって軽くなるような気がしています。

普通保育園の加配担当保育士であり、高3男女の双子と中3男子の母親でもあります。
3人とも生活に支障のない範囲での特性持ちであり、基礎感覚について学んだ今、子育て時代を振り返ると、子どもたちの生きづらさ、親としてしんどかった日々の理由が初めてわかるようになりました。

過去の自分と同じような気持ちでいる保護者に寄り添い、子どもたちの生きづらさを少しでも取り除いてあげられるような保育士でありたいと、日々奮闘中です。

これから時々保育園で感じたこと、大切にしたいことを発信して参りますのでよろしくお願いします。

保育士にゃー

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

アーカイブ

管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

ページ上部へ戻る