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歯科治療と宇佐川研(支持基底面の改善から)

目次

歯科治療と基礎感覚の関係

2018年7月に鹿児島宇佐川研を開催しました。

準備メンバーとしてもお手伝いいただいた中のお一人に歯科医師の西国領先生がおりました。

障害のあるお子さんへの治療も取り組まれる中で、なかなか治療をすることができないお子さんがいるということで、研究会開催後も宇佐川研はご相談にのってきました。

診療がやり辛い事例として、触覚防衛反応(口腔内の過敏さの特に強い状態)が強く、診療器具を口の中に入れることができず治療が進みにくいお子さんがいらっしゃいます。

触覚防衛のあるお子さんについては、障害のあるお子さん専門の歯医者さんですので、様々な取り組みから改善へのアプローチをされてきていまいた。

例えば、待合室にハンモックが置かれており、診療を待っている間にユラユラ揺れることで覚醒を高める活動などをされてきてました。

さらに、研究会参加後はらは、すぐに待合室にトランポリンを導入するなど、できることは何でも即行動の歯科医院です。
 

研究会参加後の待合室(トランポリンとピーナッツ型バルーンの投入!)

 このように、なんでもすぐに実践される西国領先生から、あらたなご相談をいただきました。

ケーススタディから見えること

●背板が倒せない原因とは?

「背板が倒せない」という事象は、氷山モデルで例えるなら、海水の上に出ていて見える部分にすぎません。

この背景に何があるのかを考えること。氷山の下に隠れている見えない原因を考えるということ。

「仮説」を立てることが大切です。

「背もたれ」を倒せない理由があるはずです。宇佐川研の「平衡感覚」の回に参加された方ならすぐに思いつくかもしれません。
 

「平衡感覚」の仕組みとはたらきから

平衡感覚の大きな作用としては、バランスを取るということです。

そのバランスの感じ方につまずきがあるのではないかと考えました。
 
平衡感覚の仕組みとして、「三半規管」から傾きの情報が脳へ送られます。三つの半規管があるので、「三半規管」と言います。

仕組みとしては、頭が傾くと、半規管の中に内リンパ液の水流が起こり、半規管内のクプラという毛のようなものが、その水流によりなびき傾きを感じています。

そのうちの前後に傾く際に感じる後半規管からの情報が過剰に反応しているのではないかと考えました。「重力不安」や「姿勢不安」と言われるような症状です(厳密には2つの症状は分けて考えますが、ここでは省略します)。

ほんの少し傾いただけで、「グルンと回転したかのように感じる」様子です。

今回は歯医者さんの診療台ですが、「プールが苦手な子」の中には、水の中に入った瞬間、無重力になったかのようにグルンと回転する感覚がものすごく怖くてプールに入れないというお子さんがいることも知っていただけたらと思います。 
 

三半規管のイラスト(わっかが三つつながっている部分が半規管。うずを巻いている部分が蝸牛と呼ばれる音を感じる部分。)

「原理原則」からの「仮説立て」

平衡感覚につまずきがありそうなことを、まず「背もたれが倒せない」事象の原因として一つ考えました。

まだ情報が少ないので、相談にいたった背景的なことも含めて西国領先生に保護者の同意を得て教えていただきました。

このような情報をいただきつつ、根本改善には、これまで続けてきていただいている平衡感覚の改善のアプローチを続けてほしいと伝えました。

その上で、歯医者さんですぐにできる支援として次のようなことを、簡単にですがお伝えしました。

重力不安へのアプローチ

重力不安へのアプローチの考え方として、「体軸」があります。自分の身体が傾くことで大きな恐怖を感じます。

そこで、一番安定している状況というのはどのような姿勢でしょうか?

一番安定している姿勢というのは、寝ている姿勢です。寝ている姿勢というと、自分の身体を支える面が全て背中に密着している様子です。

この状況を作ってあげることで、重力不安を抱えるお子さんも落ち着いて過ごせるのではないかと考えたのです。

そこで、お伝えしたのが上記のLineのやりとりです。

支持基底面を広くすることと、低反発のマットをひくことで椅子と身体との密着度を高め、身体の軸がずれない(頭が常に体軸上にある)ようにしながら、診療台をゆっくり倒していったら、お子さんは倒れる感覚を受け入れられるのではないかと仮説立てした次第です。

発達支援とは?

仮説と検証の繰り返し∞

11月24日に相談を受け、12月26日が次の診療となりました。その間にホームセンターなどでクッションを揃えてくださったそうです。

その12月26日となりました。いただいたLineがこちらです。

その時の診療の様子がこちらだそうです。

初めて診察台を倒して治療ができました。
マットがずれると自分で身体に当たるように直していたそうです。

ご連絡をいただいた時は、嬉しいと思う気持ちよりも「ホッ」としました。

もし、うまくいかなければ、今回の診療に期待をもっていらっしゃるお子さんとお母さんのお気持ちを裏切ることになってしまうからです。

だからこそ、毎回真剣です。

発達支援は当たりはずれではありません。これまで蓄えた知識と経験を基に、過去の症例等と照らし合わせて課題への仮説を立てます。

一朝一夕でうまくいくものでもありません。

今回はうまくいった事例ですが、仮説通りにならないこともあります。そして、ビギナーのうちは、うまくいかないことばかりです。

うまくいかない理由としては多々あります。

・「知識」が不足していること。

・「臨床経験」の少なさ

・「仮説立て」をしていない

などがあげられます。

発達支援で一番必要なこと

発達支援で一番大切なことは、「私が最後の砦」と思えるような「逃げない心」かと思っています。

誰でも、最初は経験などありません。

経験が無いのであれば、経験豊富な人に聞きにいけばよいことです。

知識が不足しているなら、学べばよいことです。


誰かがなんとかしてくれるというような気持ちがあると、結局は環境のせいや障害のせいにして、目の前のお子さんから目をそらしてしまいがちです。

とはいえ、うまくいかない時はにげたくなる気持ちになることもわかります。

そのような心に対して宇佐川先生が亡くなるまでずっとお伝えしてくださった想いがあります。

宇佐川研が目指すもの

本気の実践仲間が手をつなぎあう場所

私達、宇佐川研が目指すのは、本気で取り組む実践家集団を作ることです。

専門的な知識を学べる場、環境を整えていくということも目標の一つではあります。

それよりも、一人で頑張っている仲間と仲間をつなぎ、目の前のお子さんを本気で支えていける仲間を増やしていくことこそ目標にしています。

本気に取り組むからこそ、職場でくじけそうになったり、周りから反発をうけることがあります。

一人ではくじけそうでも、周りに本気に取り組む仲間がいてくれたら心がおれないはずです。

お母さんの灯台に

お子さんの発達について「何かおかしい」「不安」と思う心に対して、
 
 
「様子をみましょう」


という、言葉でどれだけのお母さんの心を傷つけてきているでしょうか?


「もう10年様子をみてきました。まだ様子をみろというのですか?」


私が以前担当させていただいたお母さんが医療現場で言われた言葉への感想です。

お子さんの発達に不安を示しているお母さんの心は、


「霞のかかった大海原で、どっちへ進んでよいのか分からない。誰か進むべき方向を教えてほしい。道標を示してほしい」


と、思っていらっしゃるのではないかと思います。


そのような不安でいっぱいのご両親への「灯台」となり、不安な気持ちが少しでも和らぐような、発達に関する情報をお伝えしていけるように努めて参ります。

支援者の願い

プロだからこそ

今回のお子さんへの支援について診察を終えたあとメッセージをいただきました。

7月に鹿児島宇佐川研を開催してから、ほぼ毎週のように診療所での実践報告をしてくださっている西国領です。

私にとり、自分だけの再現性ではなく、発達の原理原則をお伝えしたことを実践し、成長の様子の報告をいただけることが何よりの励みになっています。

その御礼をお伝えしました。

プロだからこそ、歯科医師として歯の治療ができるという「当たり前のこと」を「当たり前にする」ために日々悪戦苦闘されいるのだと思います。

でも、そこに障害があるからという理由だけで逃げてしまったらプロではない!

という、西国領先生のプロ意識があるからこそ、鹿児島県志布志市発信でお子さんの笑顔が広がっていくことを日々考えてくださっています。

そして最後に、西国領先生から、


「私たちは、子どもたちが自分の人生を生きて欲しいと願っています。」


というメッセージを2018年最後のメッセージとしていただきました。


私も全くの同じ思いです。


来年も、宇佐川研で出会うたくさんの実践家仲間を通して、発達につまずきがあろうが無かろうが、子どもたちにそして、子どもたちを支える皆様に笑顔が増えますように歩んで参ります。


2018年もありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


宇佐川研(発達障害臨床研究会)代表
植竹安彦

※西国領先生は恥ずかしがり屋さんなので、お顔はだしませんでした。

Aくんを見守る西国領歯科の応援団

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