歯磨きを嫌がる子の背景理解と改善への取り組み

なぜ歯磨きを嫌がるのか?

親子でストレスな歯磨き

暴れる我が子を汗をかきながら押さえつけて、歯磨きの時間はまるでプロレスの時間と語るママも多いですよね。 毎日のことなので本当に大変だと思います。

嫌がる子の原因のほとんどは触覚防衛反応(触覚の過敏さ)によります。 防衛反応というだけに、触られる事が命を脅かす刺激として感じるからです。

触覚防衛反応(触覚過敏)とは?

防衛反応は、生命を維持するための脳幹レベルの反応です。本来は反応すべきではない場面でも反応してしまっていることによります。 この反応にブレーキがかかるようにするのが改善の肝です。

過敏さにブレーキをかけるには、識別系と言われる大脳皮質から命令が出るようにすることで、下位にある脳幹からの命令にブレーキをかけられるようになります。

ではどうしたらよいのか?

改善への考え方

意図的に触覚を使う練習が必要です。注意を向けて触れられる練習をします。触るのではなく触られるというところが大切になります。

触覚防衛反応を示す子の読み取りを難しくする点として、「自分からは触れる」ということ。 でも「触られる」のがダメなんです。

触られることが不快、痛いと感じるなどから、身を守ろうとしているからです。 無理強いすればするほど、命が危険!身を守ろう!となります。

口や耳など、頭や首など動物でいえば攻撃されたら命に関わる部位は特に防衛反応が出やすくなります。

防衛反応(過敏さ)改善への取り組み

触覚全般への取り組み

注意を向けて触れられる練習として、手のひらにヘアブラシや冷たい缶など、注意を向けやすくなるものを少し圧をかけて触れさせます。触れさせ方にコツが少し必要なのと、重度の触覚防衛反応を示す子には最初はうまくいかないこともありますので無理はしないようにしましょう。

無理というのは、嫌がったらそれ以上強引に行わないということです。

触れさせるものにブラシでないといけないなどの指定はなく、手で握ってもよいです。大切なのは、お子さんが触れられているという注目を、触れている部位や触れさせている人へ向ける反応を引き出すことです。

止めて!と手を引いたら止めてください。無理強いすると防衛反応を強めることになります。

歯磨きでの改善の取り組み

歯磨きと同時に防衛反応を改善する方法としては、乾電池タイプ(安くて振動が強くないため)の電動歯ブラシを用意します。

なぜ電動歯ブラシが良いのかというと、振動刺激は固有覚(筋肉の感覚)に刺激が加わり、防衛反応を示す子にとっても心地よいと感じることが多いからです。

電動歯ブラシですがいきなり口の中に使わず、お子さんにスイッチを入れさせてみます。いきなり苦手な歯ブラシを使おうとすると、お子さんは何をされるのか!?と身構えるからです。

お子さんがスイッチを入れる事も嫌がるようなら、少しお子さんから離れたところで、ママがスイッチを入れて見せて、ママの手にあてて「あら気持ちいい」という表情を示してあげてください。お子さんが受け入れる準備ができたら、 振動をお子さんの手や胸、あご、ほっぺと5秒くらいずつ、少し圧を加えてしっかりと当てます。

振動を体に触れさせた時に嫌がらない、気持ち良い、という表情を示したらラッキーです。口へのアプローチ段階に入れる可能性が大だからです。

口の中に入れてもよいか聞き、3数えるだけ、など必ず出すことを伝え、下の奥歯の歯茎にブラシを少し圧をかけてあてます。 こすらず、歯茎一本ずつに「1・2・3」と数えながら3秒ずつ当てます。もう少し長く当てても大丈夫であれば、5秒や10秒としてください。

長くやることよりも、注意を向けることの方が大切ですので、口の中に電動歯ブラシを入れる際は「いくよ」など言葉掛けをして、その都度注意が向くように促してください。

歯ブラシを当てる順は「下の奥歯、上の奥歯、下の前歯、上の前歯」の順です。 理由は一番過敏さが出るのが上の前歯だからです。 上の前歯は特に無理しないようにしましょう。

歯磨きをすることが目的ではなく、触覚防衛反応(過敏さ)の改善が目的ですので、前歯をきれいにしたい時は、ガーゼなどで拭き取ることに置き換えてもよいと思います。

まとめ

手にブラシを当てたり、電動歯ブラシを使ったりと「意図的に触覚を使う」練習が改善への取り組みです。

キーポイントとして抑えていただきたいのは、お子さんが「意図的に触覚を使う」ということです。

ブラシを使うことや電動歯ブラシを使うということはあくまでも手段であり目的ではありません。

「意図的に」をキーワードにすると、手をつなぐ時であっても、いきなり手をふれるのではなく、「手をつなごう」と一声掛けてからつなぐことや、ふんわり握るのではなく手のひら全面でしっかり握りつつも心地良いと感じるように握るなど、どの場面でも防衛反応の改善アプローチをすることができます。

触覚防衛の改善こそ支援のスタート

なかなか触覚防衛反応の改善が進まない子もいます。 (※やるべき取り組みをすれば乳幼児や小学生くらいであればかなり改善していけます)

その場合脳の覚醒(活動性)が高まり辛い子かもしれません。 バルンポリンなど平衡感覚系の活動を取り組み、脳の覚醒を高めてから触覚の改善アプローチを取り組むと効果が出やすくなります。

触覚防衛反応が改善すると、歯磨きがやりやすくなるばかりでなく、偏食が和らいだり、お友達に手が出やすかったの出なくなったり、さらには、落ち着いて過ごせるようになったりと数々の生活のしやすさを手に入れることにつながります。

私たちの研究会では、触覚防衛反応の改善は発達支援においてまず第一に取り組むべきこととしてお伝えしています。

HSC(Hyper sensitive child)という言葉をよく耳にするようになりました。すべてではありませんが、この触覚防衛反応がこのHSCの根っこにあるお子さんが非常に多いのも事実です。

HSCだからという言葉で支援者は片付けずに、お子さんが本当に苦しんでいることを受け止め、改善していけるようにしていって欲しいと思います。

文章だけでは分かりづらい部分もありますので、ぜひ研究会への参加や、研究会のLINEからの支援情報を参考に取り組んでいっていただけたらと思います。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)
代表 植竹安彦

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管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

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