息子の“触覚防衛反応”からの育て辛さ

二学期が始まりました。
皆さん、どのような夏休みをお過ごしになりましたか?
 
我が家は、今 放課後等デイサービスを利用していないこともあって、夏休みは親子で濃ゆ~い時間を過ごしました。(笑) 残り10日となった頃、夏バテによるスタミナ切れで、私がダウン。

病院に行き検査して帰ってくると、
「計算ドリル終わらせたよ~!」
と、得意げな顔でお出迎えしてくれました。

“8ページも残ってたのに本気になれば一気に出来ちゃうもんだな~。すごいな~。”
なんて感心していると、机の端に…電卓発見!!!!!  

詰めが甘いのは、完全に母譲り 発達障がい児の母 田中ピラフです。 

触覚防衛反応とは?

ところで、触覚防衛反応という言葉は ご存知でしょうか?

感覚過敏(触覚過敏・聴覚過敏・視覚過敏 など)はよく耳にしますが、触覚防衛反応という言葉は、はじめて聞く方もいらっしゃるかもしれません。

触覚防衛反応は、感覚過敏が原因でもたらされる生理的な現象。
生理的な反応であるがゆえに、自分ではどうしようもない、人によってはとても辛く耐え難い感覚でもあります。

例えば息子は、風か少し強い日は「いたい…。」と言っていました。
幼稚園時代 風が吹く日は、上半身全体をバスタオルで包むようにして自転車の後ろに乗せたり、園バスを待つ時は私が着ているロングコートの中に入り園バスの到着を待つ。急に風が吹いた時は Tシャツの袖をひっぱる仕草をして泣いた時もありました。

「風が痛い…。」
私には、まったくない感覚。
息子からすると、生まれてから付き合ってきている当たり前の感覚。
 
感覚過敏を知り、うまく言葉に出来ずパニックになる息子の様子をみて、その辛い状況を想像するのですが、
「これ位の風、大丈夫よ。」
と、我慢をさせてしまうことがしばしばありました。

宇佐川研で、触覚防衛反応の辛さを学び、意識的に触覚を使い識別系へのアプローチを続けたことで、ずいぶんと触覚防衛反応が和らいできました。

防衛反応のある方のお話を聞くと、感じ方も人それぞれ。
“大丈夫”かどうかは、私が決めることではないんだと学びました。

宇佐川研のオンラインサロン(発達支援.com)内のお茶会などで、
「今、散髪とか爪切り、どうしてます?」
「どんなアプローチされてます?」
と、情報交換することがあります。
 
息子もなかなかの触覚防衛反応があった子で、困った過去がたくさんあります。まだまだ改善できてない部分(耳アカ取り)もありますが、幼児期~最近の様子をまとめてみたいと思います。
どなたかの参考になりますように。

触覚防衛反応・識別系 詳しくはコチラ→触覚防衛反応のメカニズム~そして改善へ~:宇佐川研代表 植竹安彦先生】

幼少期と現在の様子

触覚防衛反応は、敵に襲われたときに命を守るために備わっている人間の本能的な機能(原始系)からきていることもあり、首周り、口元、耳など、急所がある所に出やすいと言われています。

命を守る場所ということは、すなわち人間が健やかに生きていくために大切な部位。

散髪、爪切り、歯磨き、耳アカ取り、靴下・帽子・マスクを嫌がる…。
衛生面を保つことや身だしなみとして、保護者としても“きちんとしてあげたい”と思う所でもあると思います。

息子が 2~3歳位の頃は、歩くことはできましたがお出かけも大変。
・手を繋いでくれない。繋いでもすぐ離す。
・ベビーカーも嫌がる。
・落ちないように、抱っこ紐でしっかりガード。
 (しょっちゅう腰を痛めてました)
・おんぶの時は、体を90度に曲げて背中にのせる感じ
 (カメの親子のよう…)
・「ストップ!」と言っても止まらない。
 (公園で遊ぶときは、道路に飛び出さないように、出口付近にだれかいてもらう)

秋口、靴下を嫌がるので履かずに抱っこ紐で歩いていたら、
「まあ、ママはあったかそうな靴下履いてるのにかわいそうね~。」
と、通りすがりに言われたり、周りの目も痛い…。

私はずっと自分の抱っこの仕方が下手だと思っていたのですが、お友達の赤ちゃんを抱っこしたとき、はじめて会う私にも“ぴとっ”と体を預けてくれて、片手で抱いても安定していることに衝撃を受けました。

散髪

【アプローチ前】
幼少期~2019年 夏(小3)
【道具】
・はさみ △
・バリカン ✖(音がダメ)
・ケープ ✖(首回りが締まる感覚がダメ ナイロン製が苦手)

【 自宅で】
・寝ている間に切ることが多い
(広げた新聞紙の上に、布やタオルを敷き、その上に寝かせてカット)

【理容室チャレンジ】
・ケープがダメだったのでバスタオルを持参し、散髪後着替えた
・外のくるくる回るサインポールを見ながら切ってもらったこともある
・3か所行ったが、「30分座れるようになってから来てね。」「次はじっとできるよね?」と言われ断念した

【アプローチ後】
2022年9月(小6)現在
【道具】
・はさみ 〇
・すきばさみ  〇
・バリカン  〇
・ケープ  〇


【 自宅で】
・始める前に、前髪を自分で切ってみる
(痛くないことを確認。識別系も働く)
・髪の毛を3~4ヶ所ブロックに分け、ブロックごとに「〇回切るよ」と予告
・ヘアスタイルを検索し決める(最近はツーブロック)
・15分以内に終わらせるようにしている


【理容室】
・理容室カットもできるようになった
・1000円カットのような指名が難しいところでは、担当によって難しい時もある
(頭の位置を調整されるのが苦手)
・「あと何分ですか?」と尋ね、見通しがつくことで我慢できるようになってきた
・首をすくめることは減ったが、終わるまで頭をまっすぐ保持しておくことはまだ難しい
☆アイデア☆

ケープ

・通販で購入
・首回りはマジックテープで調整可

歯みがき

【詳しくはコチラ→歯磨きを嫌がる子の背景理解と改善への取り組み:宇佐川研代表 植竹安彦先生】

【アプローチ前】
幼少期~2019年 夏(小3)
・自分でするのも、仕上げみがきも嫌がっていたので、体を押さえてしていた
・短時間で済ませていたため、磨き残しも多く、虫歯もあった
・子ども歯科に行ったが、大人数名で押さえられての治療となりパニック
歯科の近くを通るだけで、怖がるようになった
【アプローチ後】
2022年9月(小6)現在


☆電動歯ブラシ
・上の歯の右側 前から2~3番目は、手首をひねる動作も入るので磨き残しが多い

☆歯磨き粉(低発泡・低香味・低研磨)
・泡が多いもの、顆粒入りは苦手
・歯科で、色々な味を試して、好きなものを選ぶ

☆デンタルフロス(超薄・持ち手短め)
・前歯は自分で
・持ち手短めのもの
(持ち手から歯までの距離感を掴みやすいように)


☆キシリトールガムの活用
・外出先
・歯に詰まりやすいものを食べた後
・歯磨きをチャチャッと済ませたとき
・唾液の分泌を促すために
☆アイデア☆




☆視覚支援
 洗面台のドアに貼っている

☆歯みがきアプリの活用
 ・はみがき勇者
 ・ポケモンスマイル など

爪切り

【アプローチ前】
幼少期~2019年 夏(小3)

・寝ている間に切る
(お昼寝しなくなってからは、夜 布団をかぶってライトで照らし切っていた)
【アプローチ後】
2022年9月(小6)現在



【事前準備】
・カレンダーに【つめきり/足】【つめきり/手】と書き予告
・「粘土が爪に詰まるから切っておこうか?」
 「カードが取りにくくなってるから切っておこうか?」
 など、本人のメリットになることを伝え、OKをもらう

【本番】
普通の爪切り:自分で切ってみるとき用(識別系)
ニッパー型の爪切り:切ってもらうとき用
 可動域が広く、足の親指や巻き爪も切りやすい
 切れ味がよく、切った時にパチンとはじける感じが少ない
 息子が自分で切るのは、まだ難しい
☆アイデア☆

☆電動美容ネイルケア(seria など)

・爪切り前に自分で(識別系)
・爪が少し伸びた時
・ガタガタを気にしている時

識別系を意識したアプローチ

宇佐川研で学び始めて、『触覚防衛反応へのアプローチには“タッチング”が効果的』という話を聞きました。

そこで購入した本が、宇佐川研 スーパーバイザー 木村 順先生の著書
『遊んでいるうちに手先が器用になる! 発達障害の子の 指遊び 手遊び 腕遊び』

タッチングは、タッチされている時その部位に意識を向けることで“識別系”を育てます。
なので、寝ている時にやっても、何かに夢中になっている時にしれっとやっても、意味がない!! 
 
~タッチング~
ポイント① 道具は使わず、素手でもOK
ポイント② タッチング中、子どもの注意や関心が向いているかどうか、読み取りながらおこなう
ポイント③ 広い面積を、均等な圧力で押す
ポイント④ 平気な身体の部位からはじめる


 
我が家もはじめ手のひらを押し当てていたのですが、圧のかけ方や意識の向け方が上手ではなく、よそを見ながら「まだするの?」と、言われるようになってしまい、どうしたもんかと思っていました…。

そこで、アイテム投入
・100円ショップで母セレクト (ニコニコスポンジ、カーラー など)
・息子と一緒にお店で選ぶ (おにぎり、ブーブークッション など)
・家にある日用品 (耳かき、カーラー など)
・一緒に作ったものや、好きなおもちゃ (マイクラ ガラスタイル、ブタさん風船 など)

押したときに
・音が出る
・光る
・形が変わる(中身が出てくる)

押しながら
・効果音をつける
・なりきってしゃべる
・ちょっと焦らしてみる など

飽きがこないように、ちょっとづつアレンジを加えています。


また、タッチングの道具を使う時も、
“広い面積“ or “狭い面積”だったら … 広い面積
“強めの圧力“ or “弱めの圧力”だったら … 強めの圧力 の方が、苦手さが軽減しやすく

身体の部位については、
“手” “腕” “首回り” “お腹” などは、防衛反応が出やすいため注意が必要です。

苦手な感触については無理にアプローチせず、様子を見ながら大丈夫になってきたら、
“背中” “足” など、防衛反応が出やすいとこから離れた部位からはじめ、子どもの様子をみながらアプローチを続けたり、一旦やめてみたりすることをオススメします。

また我が家は、気付いた時にできるようにタッチング用ボックスを作り、リビングのソファー下に置いています。
「今日はどれでやってみる?」
と、本人に選んでもらったりしながらアプローチの時間を楽しんでいます。

タッチング

広い面積
(まずはこちら)
狭い面積
(広い面積に慣れたら)
スポンジ
・スポンジ
・ブーブークッション(DAISO)
・おにぎり/ペットグッズ(DAISO)

・アイスパンチ(DAISO)
フワフワ
・ふわふわポーチ
チクチク

・頭皮マッサージ

・カーラー
ヒエヒエ


・ガラスタイル(息子と工作)

・コイン
ペタペタ
・ブタさん風船(片栗粉入り)(DAISO)
・押すと光るウンコ

・卵を産む にわとりスクイーズ(DAISO)
・口からスライムぼうず(seria)
サワサワ

・静電気吸着ブラシ(seria)
・ポンポン など

・フェイスブラシ
・耳かきのフワフワ など
☆アイデア☆

パペットでタッチ

・ボディウォッシュミトン(seria)
パペットで話しかけたり、押してみる
広い面・強めの同じ圧力がポイント  
☆タッチングボックス☆ 

感覚マット

☆感覚マット


感覚マットで足裏改善より】

ウルトラ怪獣の触探索

☆ウルトラ怪獣の触探索


大好きな『特撮』を通して見えたものと感覚アプローチより】

空気砲にもなるよ! つかみどりボックス

☆空気砲にもなるよ! つかみどりボックス


そうだ!ハロウィンだ! 感覚遊びをしようより】

開封まぜまぜ☆フェイクスノー

☆開封まぜまぜ フェイクスノー


クリスマスまで待ちきれない!感覚遊びで楽しもう!より

思春期と満たされる体験

思春期を目前の息子。
触覚防衛反応は和らいできたことで、新たな悩みというか気になることが出てきました。

身長も140cmを超え、心も体も大人に変化しようとしている時期にさしかかり、周りの人や母との距離感も教えていかなければならないと思っていた矢先、抱っこやスキンシップを求めてきたり、甘えん坊になっていきました。

ただ今まで出来なかった、パズルの凹凸が噛み合うようなしっかりとしたハグができるようになった時期でもあり、
「ようやくこんなスキンシップがとれるようになったのに…。」
と、悲しくなり、発達支援.comの夜のお茶会で泣いてしまいました。

先日お昼のお茶会で、木村順先生より「満たされる体験」について話が出ました。
息子は、これまで足りていなかったスキンシップという「満たされる体験」を、今ようやく満たせる身体になったのだと思います。

また、触覚防衛反応は和らぐと、過剰に求めることがあるというお話もありました。

1年程前、息子の中でドラキュラブームがありました。
首回りを触られるのが平気になって、交代で首辺りを噛むマネをする“ドラキュラごっこ”。
その時 腕に出る鳥肌がとても面白いようで、数ヶ月程ブームになり、このままハマってしまったらどうしよう…と思ったのですが、しばらくすると“満たされた“ようで、ブームも終焉を迎えました。

そのちょっとあとから、バリカンで襟足や耳周りをカットできるようになりました。
(少々首をすぼめることありますが、ツーブロックヘアが出来るようになりました。)

さいごに

宇佐川研で学ぶようになり、昔を思い返すと幼児期からしっかり防衛反応が出ていて、
ケーススタディで乳児期の様子をスーパーバイザーの先生方にみていただくと、もうすでに赤ちゃんの頃から出ていました。

もっと早く気付いてあげられていたら…。

今でもそう思わなくはないですが、小3になってからはじめたアプローチでも効果を感じています。
お出かけのとき手をつないでみたり、
「ギューが足りない!(ハグ)」と言われギューしたり。

宇佐川研で学んでいなければ出会えなかった姿であり、
「もう6年生なんだから。」とスキンシップを拒んでいたかもしれません。
 
今まで満たすことのできなかった関わりを、今になってできていることに幸せを感じています。

田中ピラフ

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管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

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