発達支援の考え方

発達支援は脳機能の改善支援

発達を支援していくにあたって、現在様々な取り組みが行われていると思います。身体にはたらきかける取り組みや、音楽を用いた取り組みなど多岐にわたります。

はたらきかけ方やはたらきかけている身体の部位は様々ですが、最終的に改善を図りたいのは脳機能の改善です。もちろん身体障害により、運動機能の改善であれば身体の各部位ということもありますが、それでも身体を動かすための司令を出している脳へのアプローチをしているといえます。

脳機能の改善ということは、脳神経のネットワークを再構築していく作業となります。脳神経をつなぎ直すには、脳がその情報は私にとり大切な情報だという認識が必要になります。

では、どのようにして脳に大切な情報だと思わせるかと言うと「頻度」が必要になります。頻度が高くなることで、そんなに何度も使う情報であれば、より効率良く情報が届くように届きやすい道作りをはじめます。

イメージとしては、誰も通っていなかった山の中の茂みに、毎日何度も人が行き交うようになると、茂みの中にケモノ道ができてきて、さらに何度も何度も通ることで地面が踏みしめられ、道がだんだん広がります。そして最終的には通りやすいようにアスファルトがひかれ、車がより高速に走れるようにガードレールなどが整備されていくような感じです。

脳機能の改善には頻度が必要

何が言いたいかといいますと、月に1回程度の療育で発達のつまずきを大きく改善していくには、頻度が足りないということです。どんなに優れた療育活動も月に一回の頻度では、新しい道(脳神経のつながり)を構築するまでに至り辛いのです。

そこで、月1回の療育であれば、その間の期間に行うホームワーク(家庭療育プログラム)が必要だと考えています。それは、セラピストの方が行うような専門的なものでなくてもよいのです。セラピストの方の十分の一の効果でもよいから、脳の中の道作りに貢献する取り組みが欠かせません。

認知の向上を図る流れ

認知の向上を図るためには、その認知を支えるだけの土台がないといけません。家造りでいえば、大きな家を建てるためには、家を支えられるだけの基礎工事が必要です。土の中に地盤まで届く杭を打ったり、コンクリートで家の土台を作ったりすることです。

人間においても同じことが言え、考える力を支えるには、考えるために必要な身体機能が必要になります。高次な力として、頭の中でイメージしたりことばを通じで思い浮かべたりする力があります。

イメージするためには、目で見るという力が必要です。目で見るためには、目を見たいものに焦点を合わせていくための眼球運動が必要です。さらには、見るためには頭が安定していないといけないので、首の安定性が必要であり、首の安定をつくるには、体幹の安定が必要となります。

このように高次な力を発揮するには、土台となる身体機能が育っていることが必要となります。発達障害など発達につまずきがある子にとり、この土台に課題があることをほとんどでありながら、土台づくりに必要な頻度のあるアプローチがほとんど行われていないの日本の支援の現実だと捉えています。

土台を築く基礎感覚

人の身体の土台とは具体的に何であるかというと、基礎感覚(初期感覚)になります。基礎感覚とは「触覚」「平衡感覚」「固有感覚」の3つの感覚のことを指します。五感という言葉はよく聞くかと思いますが、基礎感覚とは聞き慣れない言葉だと思います。

基礎感覚が何かというお話は別でしたいと思いますが、人の発達の基礎となりますので、ここを改善していくことで、その上に乗っている様々な機能の改善も同時に図ることができる非常に大切な感覚であります。

平衡感覚の改善が支援のカギ

基礎感覚の改善には、「触覚」「平衡感覚」「固有覚」のそれぞれのどこに課題があるのかを見極める必要があります。基礎だけに3つの感覚のどれも大切なのですが、まずはじめに改善を図るべき感覚が「平衡感覚」だと捉えています。

「触覚」のつまずきが認知発達にも対人関係の発達にもものすごく大きな影響を与えるのですが、「触覚」の改善を図るには、脳自体の覚醒が高まっていることが条件としてあります。

※最終的には、支援において触覚のつまずき、特に「触覚防衛反応」を改善するところまでは必須のことだと捉えています。しかし触覚防衛反応を改善するためにも以下の理由から、まず改善すべき感覚があるのです。

発達障害のお子さんの多くは、この脳の覚醒が高まり辛いという特徴があります。低い脳の感度の状態ではどんなに触覚にアプローチをかけても改善効果が上がり辛いだけでなく、アプローチ自体が難しくなりがちだからです。

そこで、平衡感覚の3つのはたらきに目を向けるとつまずきの改善に加速度が増します。

平衡感覚3つのはたらき

平衡感覚からつながる3つの神経経路があり、この3つの神経経路の改善が進むと大きな改善となります。

①自律神経の改善

平衡感覚のことを解剖学では「前庭感覚」といいます。この前庭と自律神経のつながり「前庭(平衡感覚)-自律神経系」が1つ目の改善です。

自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は活動性を高めるための神経であり、副交感神経は身体の修復や休息を図るための神経です。この両者のはたらきがあって私たちは自分のもっている力を発揮しやすくなります。

特に脳の覚醒を高めるというのも、この自律神経のはたらきです。脳機能として急激な加速度刺激が平衡感覚に伝わると覚醒が高まる反応が出やすくなります。これをジェットコースター効果と言います。平衡感覚の中でも「耳石(じせき)」と呼ばれるセンサーは直線加速度と重力加速度を読み取っており、この耳石を使った運動がキーポイントになります。

②姿勢調節機能の改善

2つ目は、前庭(平衡感覚)と脊髄のつながり「前庭(平衡感覚)-脊髄系」の改善です。このつながりにより、平衡感覚から揺れや回転する速度の情報を脳が受け取ることで全身の筋肉へ命令を出すための神経のつながりです。

この脊髄神経との情報伝達が良くないと、背筋を伸ばして座り続けることや、不安定な場所をバランスを保って通ることなどが難しくなります。特に姿勢保持としては、筋力をつけることよりも、筋肉の張りの状態(筋緊張)を維持させることが大切なので、前庭-脊髄系のつながりは学習や運動をする力の源と言えます。

③眼球運動の改善

3つ目は、前庭(平衡感覚)と眼球を動かすための筋肉へのつながりである、「前庭(平衡感覚)-動眼系」の改善です。目は片目に対して6本ずつの筋肉を巧みに調節して目玉(眼球)を動かしています。

ところが近年、眼球を動かしづらい子どもたちがたくさんいるのです。これは、外遊びをほとんどしなくなってきていることの影響が大きいと言われています。

回る、跳ぶなどの平衡感覚遊びをたくさんすることで、この目を動かすための神経経路が育っていきます。ところが幼少期から運動経験が少ないことにより育たずじまいの子が多いと言えます。そこに発達障害など、さらに脳の器質的なつまずきによりいっそう目が使いづらい子が増えていると考えられています。

この目を動かすための筋肉は、本を読む時に必要な滑らかな目の動かし方、見比べたり、飛んでくるボールを目で追うための瞬時に目を動かすため、さらには、1箇所を見続けるための目のコントロールする力に必要となります。

このように、平衡感覚が適切にはたらくことは、生きていく上で非常に大きな要素を占めるのです。平衡感覚につまずきがあるということは、上記の他に右脳と左脳を連動したはたらきを妨げたり、右半身と左半身が別々の動きをしたり、仲良く協応した動きをするための源にもなっています。だからこそ、平衡感覚の改善から取り掛かることが発達のつまずき改善する上で非常に有効になってくると考えています。

バルンポリンで発達ロケットを打ち上げよう!

基礎感覚を改善するには、それでは何をしていったらよいの?と思われると思います。上記でも少し触れましたが、公園や、できたら野山で思いっきり全身を使って遊ぶことが一番良いのですが、昨今の子育て事情やコロナウィルスの感染拡大予防などを考えると外遊びを毎日するのも難しい世の中です。

そこで、天候にも左右されず、いつでも1畳の広さがあれば取り組める宇佐川研オリジナルメソッドとして「バルンポリン」をご紹介したいと思います。

※「バルンポリン」は宇佐川研代表の植竹が考案した商標登録されたオリジナルメソッドとなります。

バルンポリンは、ピーナッツ型のバランスボールをトランポリンの上に置き、そのボールの上に股がって座り、ピョンピョンジャンプする簡単メソッドです。(お子さんの年齢や認知発達段階により安全性が変わるため、跳び方の詳しい動画等は、しっかり学んでいただける方のみにご覧いただきたいため、宇佐川研公式LINEよりご覧いただけるようにしております。)

バルンポリンは主に平衡感覚の改善として用いられ、平衡感覚の中でも「耳石」と言われるセンサーにはたらきかけるアプローチです。耳石に感覚情報が届くことで、全身を伸展(伸ばす)させる命令が脳から出やすくなります。

また、重力加速度をふんだんに得られることと、トランポリンとバランスボールの張力の跳ね返りがお尻の周りの筋肉群を刺激することにより、コアスタビリティ(体幹の姿勢調節機能)の向上が図ることができます。

最低週に4日、できたら毎日3分から5分で良いので、バルンポリンに取り組むと、姿勢調節、脳の覚醒、眼球運動だけでなく、オムツ外れの改善やリズム感覚の向上など、数え切れないほどの改善事例を研究会では頂いております。

発達のメカニズムからの改善を

世の中には、「たったこれでけでできる○個の方法」のようなHow to支援があふれかえっています。しかし、How toが合う子もいえば合わない子もいます。そして合わなかった場合、その子の障害が重いせいにされてしまったり、努力が足りないなどと言われてしまう姿を何度も目にしてきました。

宇佐川研が目指す支援の姿は、お子さん一人ひとりに適した支援を届けることです。だから、How toではなく「なぜ?どうして?」その子がうまくいかないのか?という「know-why」を何よりも大切にしています。

「know-why」の発想を基にするには発達のメカニズムを理解しながら実践する必要があります。支援者が成長するまでには非常に労力と時間がかかることではありますが、発達につまずきがあろうとも無かろうとも、その子一人ひとりがもっている可能性や本当の力を引き出すためには、私たち支援者が学び続け、仮説と検証を繰り返す実践を積むしかないと考えています。

バルンポリンだけで支援が完結するとは1ミリも思っていません。しかしながら、発達のつまずきを改善を図る、毎日取り組め、療育効果が高い簡単アプローチは支援においては必須です。

ぜひとも、毎月ほんの少しずつでも発達を私たちと一緒に学んでみませんか?子どもたちの真剣な眼差しで学んでいく姿と、成長から得られる笑顔を子どもたちに引き出すことができたらと思います。子どもたちの笑顔こそ、大人の活力にもなり、日本を元気にすることができると信じています。

さぁ一緒に、難しいけれど、深くて楽しい発達の世界を味わっていきましょう。

宇佐川研代表
臨床発達心理士 植竹安彦

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管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

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