偏食改善の考え方とアプローチ

「好き嫌い」と「偏食」の違い~偏食とは何か~

好き嫌いというと、食べられることもあれば、食べられないこともあるというようなレベルを想定しています。調理法を工夫することで食べられたり、野菜を育てる活動などから興味関心を広げていくことで食べられるようになるレベルを「好き嫌い」と研究会では捉えています。

偏食までいくと、ちょっとやそっとのアプローチではなかなか食べられるようにならないレベルのものを想定して、記述して参ります。

もちろん、調理法の工夫や食育教育なども非常に大切ですし、有益なことだと考えています。

しかしながら、研究会に寄せられる偏食のご相談は、そのような手段はすでにやり尽くしてきており、それでもなお食べられるものが極端に少なかったり、限られていたりするお子さんが多いからです。

偏食指導の前に考えて欲しいこと

誰のための偏食指導か?

偏食指導の前に一度でもよいので考えていただきたいことがあります。それは「誰のための指導なのか?」「誰の幸せにつながるのか?」ということです。食べられないよりも食べられるものが多いほうが、栄養の観点などから好ましいとは思います。

でも、泣きながら嫌いなものを食べさせられたり、居残りしてまで食べるというようなことは、お子さんにとって自己肯定感を削り取るだけになりかねません。日本の「もったいない文化」が作った方に失礼でしょ!という思いから食べないといけないという強い圧になっているのかもしれません。偏食指導を進める上で、まずお子さんがハッピーになれるような計画を立てた上で行ってほしいと思います。

人間も動物です

偏食という前に、人間も動物であるということを思い出すと少し発想が柔軟になると思います。
「うちのライオン、肉しか食べないんだよね。」って動物園の飼育員さんが言ったとしたら変ですよね。肉食動物が肉しか食べないことには何も違和感がないはずです。

人間が雑食動物であるがために生まれた悩みが偏食だとも言えます。だから、少しくらい食べられるものが偏っていたとしても、いきすぎた心配にならないような視点も必要です。

そして、動物であるからこそ、これは本当に食べても大丈夫なのか?という防衛反応がはたらくとも言えます。味覚の前に触覚や嗅覚の過敏さから偏食が起こっているかもしれないということです。この視点についてもう少し述べていきます。

「なぜ」偏食は起こるのか?を大切に

 いろいろな可能性が考えられますが、「好き嫌い」だけではすまないくらい、食べられるものに偏りを見せる子どもたちがいます。

その「偏食」指導の考え方について述べていきます。

 まず、偏食(好き嫌いの段階より、より偏りが著しい状態)になっているのか、その原因や理由を「仮説立て」しながら考えていきたいと思います。その際に、3つの原因があると私は思っています。

(1)「認知発達の段階」

 マイペースながらも目で見て(視覚情報)、給食のお盆の上の何種類かのお皿から選べる(弁別できる)発達段階まで育っているこ段階。型はめパズルでいえば、手でパズルを持ってからはめる先の穴にはめ込める段階です。この段階は研究会で用いている「感覚と運動の高次化理論」では「パターン弁別」段階と呼んでいます。

もう少し先の段階に、「これちょうだい」とお子さんにはめて欲しい形を示し、お子さんがその形を選択できる段階があります。この少し難しくなった弁別の段階を「対応弁別」と呼んでいます。

 パターン弁別段階は、ちょっとした「違い」は分かるだけに、「この食べ物は歯触り、舌触りが大嫌い」「見た目が嫌」「この味が好き」「この香りはイヤ」と、よく味わう前に、よく見る前に、こだわりのような固い判断が「偏食」の原因となっていると考えられます。

(2)「触覚の過敏さ」による影響

 手や足だけでなく、口の中にも過敏さを示す子どもたちがいます。偏食というと、「味」による違いで、食べる・食べないと考えられることが多いのですが、味の前に「歯触りや舌触り」といった口の中の「触覚」に対して生理的に身構えてしまう状態(触覚過敏や触覚防衛反応とも言う)が出ていることが考えられます。

 また、触覚の過敏さが強くでているお子さんは、触れられることも嫌がることが多いため、人との共感性の育ちにも影響が出ることがあります。「好きな友達がおいしそうに食べているから、僕も食べてみよう」など、新しい経験を人との関係性の中から得るチャンスを逃してしまいがちになります。

(3)「匂いの過敏さ」による影響

触覚の過敏さと並び、嗅覚の過敏さがあるお子さんも多いものです。食材の匂いから食べられないというお子さんもいます。嗅覚の過敏さからの偏食は、なかなか改善が難しい部類に入ります。

なぜなら、嗅覚は脳へストレートに情報が届くためです。動物でいうと、腐敗したものを食べてしまうと命に影響します。腐敗しているかどうかを判断する材料が嗅いです。人間も動物です。嗅覚の情報から無理と判断したものを子どもたちが食べるというのは非常に難しいのも事実です。

大人のように、匂いはキツイけれど栄養価が高いから鼻をつまんで食べるなどの思考につながれば食べられるようになるかもしれませんが、そもそも偏食を示すお子さんは、食べることにモチベーションをもち辛いので、まずは匂い以外の要因による偏食改善を検討したいものです。

急がば回れの偏食指導

 以上3点が予想できる偏食に至る大きな要因として考えられます。偏食になる背景を考えると「偏食」指導として、食事指導場面だけで偏食を改善しようと指導者が頑張りすぎない心構えが大切です。指導者が無理に食べさせようとすればするほど、子どもたちは食べるという行為そのものを嫌いになってしまいかねませんので。

偏食に至る要因が(1)認知発達段階と(2)触覚防衛反応のいずれかか、両方が当てはまる場合、次のような指導が考えられます。

 焦らず、急がず、じっくりとの改善アプローチ

(1)「触覚過敏(防衛反応)」の改善に向けた指導をしていく

(2)自分中心に弁別する視覚認知の段階(パターン知覚水準)から、相手に応じて視覚弁別する段階(先生や親などが○○ちょうだいと伝え、複数の中から相手の要求に応じて応えられる対応知覚水準)まで認知発達の段階を高めていく

(3)「一口だけチャレンジ」を試み、味や触感を受け入れる体験を作り、食べられた達成感を高めていく。(温度にも敏感なお子さんがいるので、温め直してから食べるなども大切です)嫌がる場合は無理をしないこと。

(4)「空腹時チャレンジ」を試み、お腹がとても減っている時に、食材への広がりを得られるようにしていく。

などの指導を焦らず、じっくりと取り組むことが大切だと考えます。

食事のことだから食事の場面だけで解決しようとすると、食べることそのものが嫌いになってしまいかねません。焦らず、急がば回れの心意気で取り組んでいきましょう。

優先すべき改善アプローチ

上記に偏食アプローチの方法をいくつか述べましたが、触覚防衛反応が確認される場合は、まず触覚防衛反応の改善を優先的に検討されてください。触覚防衛反応の改善=偏食指導にもつながっているからです。触覚の過敏さが改善されることで、お口の中の過敏さも改善されるからです。口の中で混ざる食感に対しても受け入れが良くなりやすくなっていきます。

触覚防衛反応の改善は、いわば脳トレになります。防衛反応は原始系と言われる本能的な触覚(脳幹レベルの反応)が抑制されない状態を指します。敵に襲われそうで、自分の身を守るための反応です。本能的な脳の反応に対して、意図的に使う触覚を識別系の触覚と言われます。意図的なだけに大脳新皮質レベルの触覚の使い方です。

上位の脳である識別系がはたらいている際は、下位の脳である原始系は抑制がかかるという仕組みが脳機能にはあります。

この、識別系がしっかりはたらき、原始系に抑制をかけられる脳を育てていくことが触覚防衛反応の改善の考え方であり、偏食改善の考え方にもなります。脳機能の改善を図る取組みですので、頻度と期間が必要になります。

触覚防衛反応の改善については、以下のページをご覧いただいたり、研究会で直接学んでください。一人一人適切なアプローチは異なります。その子にとって適切な支援に導けるようにしていきたいです。

宇佐川研代表
臨床発達心理士 植竹安彦

【関連コンテンツ】

触覚防衛反応のメカニズム~そして改善へ~

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管理者プロフィール

研究会の代表をしています、臨床発達心理士の植竹です。

宇佐川研(発達障害臨床研究会)は、平成2年より始まり、淑徳大学の故・宇佐川浩教授をスーパーバイザーとしてお招きして始まりました。「感覚と運動の高次化理論」を基に、臨床にこだわって行っている研究会です。

実践研(発達療育実践研究会)は、平成18年より始まり、療育塾ドリームタイムの木村順OTをスーパーバイザーとして始まりました。発達支援を行う際に必要な様々な発達理論を学び、実践を支える知識と技術を高める研究会です。

その、宇佐川研に14年、実践研に12年間学ぶ中で、第28期(平成29年度)より木村会長より代表を引き継ぎました。

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