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基礎感覚

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支援のいろは

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先輩ママ・支援者コラム

先輩ママの実践コラム

行き渋りの一人ケーススタディ

ハロウィンも終わり、一気に寒くなりましたね。
スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋、イベントの秋…
園や学校でも、運動会や発表会など ビッグイベントが開催されるこの時期。
ナーバスになり荒れ気味になる息子を見て、面談を申し込んだり、メンタルケアをしたり…。忙しくなる時期でもあります。

先日、私が鼻水ズルズルさせて くしゃみをしたら、
「いいなー。かけてー。学校休みたいー。」
と、私のマスクを外そうとしてきました。

「ごめんね、風邪じゃなくて花粉症なんだ。」小6発達障がい児の母 田中ピラフです。

目次

たくさんの事業所にお世話になって

息子は、これまで学校・こども園を軸に、療育 3ヶ所、児童発達支援事業所3ヶ所、放課後等デイサービス4ヶ所、習い事3ヶ所…、他にも 病院などを入れると20ヶ所位の機関のお世話になってきました。

たくさんの先生や支援者と出会い、本人の特性や苦手なこと、また息子の良い所もたくさん教えてもらい、多くのことを学ばせていただきました。

ただ、これまでお世話になった事業所は、全部楽しく通えていたわけではなく、“本人が通うことを拒んでしまったところ”も、いくつかあります。

以前コラムに少し書きましたが、息子は今 放デイを利用していません。(保育所等訪問支援は利用中。)
現在は、家庭教師の先生 週1回、習い事(個別) 月1回、オンライン余暇活動 月1回 のみ。
集団活動を経験するところは、今 学校のみとなっています。

対象年齢から外れた、利用日の調整がつかない、事業所の閉鎖など、やむを得ず辞めることになってしまったところもあるのですが、今思えば、基礎感覚(触覚・平衡感覚・固有覚)や 感覚過敏について、私がもっと早く学び、本人の辛さを理解して代弁してあげていたら違っていたのかもしれない…、と思うことがあります。

今回は、いまだ事あるごとに行き渋りが出てしまう 息子に試してみたことや(失敗談含む)、先日の発達支援ドットコム(宇佐川研オンラインサロン)内で、研究会会長 木村 順先生から「ここが足りてなかったんだ!」と気付いたことがあったので、まとめてみたいと思います。

こども園時代

息子は、児童発達支援事業所(以下、児発)が併設されている こども園に通っていました。
 
「ピーマンを えづきながらも 食べることができたので、たくさん誉めました!」
「手形をとる時、絵の具を嫌がって泣きましたが、よく頑張りました!」

“ほめました“
”がんばりました”
毎日のように連絡帳に書いてくださっているのを見て、当時、基礎感覚や感覚過敏について知識のなかった私は、
“苦手なことにもチャレンジさせてくれて、園って本当にありがたい!!“
“はじめは嫌がっても、きっとそのうちできるようになるんだろうな。“
と、とても楽観的に考えていました。

年中になり、定員5名の児発から、大人数の普通クラスで過ごす時間が長くなり、元気な子どもたちと 、子ども達のパワーに負けない大きな声で指導する先生の声が怖くなり、普通クラスに行くのを泣いて嫌がるようになりました。

靴箱まで抱え先生に引き渡し、泣いている息子から逃げるように帰る。
帰りはニコニコしていることありましたが、“何で帰ったんだ!“と言わんばかりに、私の体をバシバシ叩いて怒る日もありました。

「はじまってしまえば、あきらめて参加しているので大丈夫ですよ。」
「お母さんの姿が見えると、甘えたくて泣いちゃうんですよ。」

当時、テレビのセリフがメインの話し言葉だった息子からは、園の様子や気持ちを聞くことができず、
“私の心配し過ぎ?“
” 甘やかしてるからこうなってる?“
私の育て方のせいだと思いました。

そして、担任の先生の姿をみると逃げ、普通クラスでの活動を完全に拒むようになりました。
併設の児発に通えない日は、他の母子通園できる児発に通園。息子は新しい児発を喜んでくれましたが、自由遊びの時間に おもちゃの共有ができず、親子二人 小さな部屋で遊んで過ごしたりしていました。

年長になり、園併設の児発が閉鎖。
どうなることかと思いましたが、年長クラスの担任になってくださった先生が、とても優しく穏やか。以前 児発でお世話になっていた先生も 加配としてついてくださることになり、なんとか無事に卒園することができました。

未就学児のとき(こども園・療育・児発)の行き渋りの理由
・偏食指導
 給食…一口でもいいから全種類食べましょう
 お弁当…好きなもの+苦手な野菜を一つ入れ、完食する
・担任の先生の声が怖く、教室に入りたがらない
・ハウリングする音響が怖く、屋外のお楽しみ会に参加できない など

小学校時代

最近の息子は、平日 起きるまでにとても時間がかかります。(ちなみに休日は、自ら目覚ましセットしてとても早起きです。笑)

布団から出るまでに、学校イヤだな…と言いながら
「今日は何時下校?」
「給食は何? もやしある?もやしはゼロにできる?」
など、前日 自分で確認して納得しているけど、再度 間違いないと落とし込むために聞いてきます。

そこで確認・納得できると、比較的スムーズ。
40分位で朝の準備が終わり、学校での母子分離もスムーズです。

一見、甘えん坊な かまってちゃんに見えてしまうかもしれません。
以前、朝から叩き起こしていましたが、泣いて荒れて余計時間がかかってしまっていました。

小学校入学後(小学校・放デイ)の行き渋りの理由
・偏食指導
 給食…一口でもいいから全種類食べましょう
・先生の叱る声が怖い(自分以外が注意されても怖い)
・鉄棒のぶら下がりで、怖くて足をブラブラできないけど、繰り返し練習するように言われる
・活発な子が多く、耳塞ぎ(カームダウンスペースにも入ってくる) など

試してみたこと(失敗談含む)

宇佐川研や、発達支援ドットコム(宇佐川研のオンラインサロン)に参加するようになって、
「できないことには理由があり、気力や努力だけでは解決できないことがある。」ことを学びました。

そして息子の場合、今の抱えている心配事を解決する手ががりを提示しないと(解決まではできなくても)、学校に行く気にならないことが分かりました。

(1)本人に聞く

小学校にあがり、テレビ以外のセリフ以外の言葉も増えてきました。
ただ自分の気持ちや、その時の状況を話す語彙力はなく、
「何がイヤなの?」
「何か心配なことある?」と聞いても、
「わからん!」と怒って答えていました。

“何が“ という漠然とした質問に、なんと答えていいか分からないんだと気付き、具体的な候補をいくつか挙げ その中から選ぶように伝えてみました。
そうすると答えてくれるようになってきたのですが、本人からすると言いたくない質問ばかりする私に、
「うるさい!やめて!」と怒ったり、
「そんなことよりさー。」と、話をはぐらかすようになってしましました。

このまま思春期に入れば、息子の考えていることはもっと分からなくなってしまうのに、どうしたらいいのだろう と悩みました。

(2)早起きして楽しいことしよう

息子は、布団から出れば比較的スムーズに学校まで行けます。
なので、朝からお楽しみの時間を作って、布団から出しちゃおう!と思いやってみました。

・前日、朝食メニューをリクエストを受け付ける
・朝から、スマッシュブラザーズを10回対戦する
・毎朝、お楽しみ小袋を用意し開封
・目覚まし代わりに、お気に入りの動画を見せる など

良い作戦かなと思ったのですがは、息子にはまったく響きませんでした。
そんなことするなら、寝たふりした方がいいという感じ。
彼の中での学校モードへのスイッチは、布団から出る時に発動され、そこが覚悟の瞬間なのだと思いました。

(3)客観的に観察・分析してみる

宇佐川研のケーススタディに参加すると、“朝 起きれない” ということだけみても、様々な原因が考えられることを知りました。

睡眠に問題がある?
生活習慣の乱れ?
心配なこと、心の病気?
起立性調節障害?
低血圧?
天気の影響?

また、
学校がない日も、起きれないのか?
学校がある日も、毎日起きれないのか?
(曜日、時間割、給食の献立、運動会の練習が始まった…など)

子どもの様子を観察しまとめ、先生と情報共有し、先生とじっくり話をしてみることにしました。

遅刻・休みたがる決められた時間に行く予定より早く準備する
カレンダー等に書き楽しみにしている
時間軸
・給食で嫌いな献立がある
・6時間授業
・5時間授業(少し早め)
・祝日の前日(少し早め)
・運動会の練習
・発表会の練習
・嫌なことがあった次の日
(給食を完食するように言われた)
(大声で怒ってる先生を見た 等)

・4時間授業
・日直の日
・運動会当日
・遠足
・検便提出日
・習い事
・家庭教師の時間
・オンライン余暇活動
・休日の外出
(ラウンドワン、ボウリング等)
対人関係軸
・学校の先生

・習い事の先生・家族
・家庭教師の先生
・オンライン余暇活動の先生
空間軸・支援学級

・交流学級での活動
・習い事の教室

・家での活動
(おうちプール、ゲーム 等)
・家庭教師の先生の家

(4)先生と話をする

給食で嫌いな献立がある日は行き渋りが出る
まず、ここについて先生と話す時間をいただきました。

給食時間の目標として、「一口でもいいから全メニューを食べてみよう。」という目標を掲げていると言われました。
先生の思いは、“たくさんの食材と出会い、家庭でなかなかできないような調理法と出会うことで、食べられるものが増えて健康になって欲しい。”と、言われました。

先生の掲げる目標には、子ども達のことを思ってくださる気持ちからきていることは分かったのですが、
・毎日献立を見て、「今日の給食イヤだ。学校行きたくない。」と言っていること
・本人からすると、一口であっても、もやし一本であっても、たくさん誉めてもらったとしても、苦痛であること
・お友達から、「牛乳で飲んで流せばいいよ。」と教えてもらったようですが、喉にひっかっかって、吐いてしまうこともあったこと

苦手な献立のときは、どれ位の量を食べるのか、本人に決めさせて欲しい。(食べないという選択肢も認めて欲しい。)と、お願いしました。

また、宇佐川研 代表 植竹 安彦先生にも、偏食についてどのように向き合えばいいのか相談しました。
その時に言われたのが、短期的なすぐできる対策と、長期的な改善アプローチの二本柱で考えるといいよと、アドバイスをいただきました。

詳しくは、「偏食改善の考え方とアプローチ」にも書いてありますので、ぜひ読んでいただきたいです。

何かあったら、先生に連絡し、学校での様子と 家での様子を報告し合い、学校で可能な対応について話をすることを続けました。

(5)第三者の意見を聞く

保育所等訪問支援:気になる学校の活動の様子を専門的視点で見て報告・アドバイスをもらう
ケース会議:近況報告や情報交換、何かあった際には対応についてそれぞれの立場からの意見を聞く(支援学級担任・交流学級担任・校内の特別支援教育コーディネーターの先生・相談支援事業所・保育所等訪問支援・保護者 など)

第三者の方に入ってもらい、事象の捉え方や考え方についてそれぞれの意見を出し合うことで、新しい支援案が出てくることもあり、定期的なケース会議等は学びの時間でもあり助かっています。

また、東京宇佐川研ケーススタディをお願いし、先生方にも 息子の気になっていることを聞き、当日 先生方や支援者の方にも参加をお願いし、共通理解を図りました。
(その時の様子:発達凸凹な我が子が愛おしくなる宇佐川研ケーススタディ

(6)最近は…

最近は、今の状況や気持ちを伝えることが上手になってきています。
そして、気になることが出てきたときに、“先生に聞いて欲しい。”と言うようになりました。(先生に直接聞くこともありますが、直接聞けないこともあるようです。)

それは、私が思いつきもしないような、とても細かいことでした。
「〇年生は何時に帰るの?」
「牛乳パックを洗う時、一人で洗いに行ってもいいかな?」

こういったちょっとした一言を、先生に確認すると
「あ、ここが心配だったんですね…。」
と、思い当たることがあることが多く、その時の様子を聞き、先生から“これならできる!”と思えるような案を提示してもらうという流れが出来てきました。

周りから見ると小さなことでも、確認したいと思うのには、彼にとって重要な理由があるのですが、母に言えば伝わって、先生にも分かってもらえるという経験の積み重ねがあって、今やっとここまで辿り着けたと思っています。

それでもまだ、遅刻せずに通うことはできません。

また、毎日ように出てくる“心配なこと”に、
「行きたくない理由を探しているのかな?」
と、先生がおっしゃったとき、そうかもしれないとハッとしました。

学校に行く理由とは?

発達支援ドットコム(宇佐川研の有料サロン)のお茶会で、子どもの行き渋りや不登校について話が出ました。
 
その時、木村 順先生が言われたのが

学校に行く理由

①学ぶ楽しさがある
②会いたい友達がいる
③会いたい先生がいる
④居場所・役割・満たされる経験がある

宇佐川研 会長  木村 順先生

この話を聞いて気付いたことは、
“学校に行きたい理由がないのかもしれない。”
と、いうこと。

この時、木村先生から「自分の学生時代はどうだった?」と聞かれ、振り返る時間がありました。
私は、勉強はそんなに好きではありませんでしたが、友達としゃべるのがとにかく楽しくて、遊びに行っているような学生生活でした。

息子に今、学校に行く理由の①~④の中で、該当するものはないかもしれないと思いました。学校に行くということは、好きなものに囲まれ、ある程度自由にできる家から離れて、長い時間を過ごすということ。学校で過ごすことにメリットを感じなければ、“学校行きたい!”という気持ちに繋がらないのかもしれないと思いました。

「義務教育ってそんなもんだよ。」
「そこで我慢してがんばることが、生きる力に繋がるんだよ。」

そういった意見もよく分かります。
私自身 比較的学校は楽しく行けた経験があり、大人になり仕事をするようになって 学校や集団で経験した辛かったことや頑張ったことが 支えになっていることもあります。

ただ、“義務教育とは?”“将来の大きくなったときに…”と今の息子に伝えてみても、あまり響くことはありませんでした。

先日は、交流学級のお友達と給食を食べたくて、いつも多弁で“シー!”と言われるところ、はじめて「黙食」で完食することができました。
 
“楽しみなことがあるから、辛いこともちょっと頑張ることができる。”
今までは、楽しみなことが見いだせず、辛いことばかりが気になっていたのかもしれません。
前向きな姿が見られるようになって、うれしくなりました。

保護者が学ぶことで

私が、宇佐川研で学んでよかったと思うことの1つに、
“自分が感じていたモヤモヤは間違ってなかった。”
と、確信がもてたことと、その裏付けが取れたことがあります。

二次障害は、すぐになるわけではない。
長い間デッドボールを投げ続けられた結果なるもの。
振り返りができない大人の元で、二次障害が固定される。

宇佐川研会長 木村 順先生


息子の行き渋りについて、先生と対話を重ねたり、家庭でいろいろチャレンジしても、うまくいかないこともありますし、すぐに状況が好転することも少ないのが現状です。

しかし、子どもに何度も飛んできているデッドボールにいち早く気付き、ガードすることはできるようになったと思っています。
 
デットボールってなんだろう?
ストライクゾーンはどこだろう?

まだまだストライクゾーンに球を投げることはできていませんが、周りの方と協力しながら 息子が楽しいと思えるものを探し、私自身 息子の一番の味方で代弁者となれるように、学び続けたいと思います。


田中ピラフ

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