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理由が分からない癇癪(かんしゃく)の背景理解と改善アプローチ

目次

子どもの癇癪(かんしゃく)を考える

2、3歳ごろ、自分の要求が通らないと、怒ったり、大泣きしたり、床にころがったりと子どもたちはしがちです。

理由が分かる癇癪の場合はまだ、いろいろと対応の仕方を考えていけますが、理由が分かり辛かったり、えっこのくらいのことでブチ切れるの?ということが毎日続くと、親は心からヘトヘトになってしまいます。

また幼児ではなく、小学校の高学年になってもまだ癇癪が続く場合、力も強くなり暴れっぷりや破壊行為など半端なものではなくなりますし、親の方も年齢が上がるので体力の限界が近くなり、さらに身も心も疲弊しがちです。

ネットで「癇癪」と検索すると、たくさん出てきます。今回はネットで検索してもあまり書かれていない点にしぼって癇癪をお伝えしていきたいと思います。

癇癪とは

癇癪は怒りや興奮が一瞬で爆発したような混乱状態となり、大声で泣き叫んだり、激しい奇声を発したり、全身を使って暴れるような状態です。気持ちや感情をコントロールできる範囲を超えてしまった状態です。

癇癪が起こると発達障害との関係性を気にされる方も多いですが、通常の発達の中でも自我が大きく芽生える1歳半から2歳以降に見られることが多いです。

別の視点から考えると、感情を抑える力よりも自分の情動が大きく上まわってしまった時に激しい行動としてでるものだと言えます。ではどのような時に感情が爆発するのでしょうか。

A:不快(生理的)な現実 ・・・発達のつまずきどころ
B:不愉快(心理的)な現実・・・周囲の環境や関わり方

このように整理してみると理解しやすくなるかと思います。

生理的な不快については、暑い、お腹がすいた、便秘(お腹が苦しい)など様々な要因があげられ、これは比較的理由が推察できるものです。

心理的な不愉快については、自分の思いが通らない時に、具体的な解決方法が見つけられないがために、わめく、暴れるなどに至りがちです。心理的不愉快の内容として次の4つほどがあげられます。

①自分にかまってくれない時(かまって欲求)
②自分なりのマイルール、マイスケジュールが叶わない時(自分勝手であったとしても。イヤイヤ期に多い)
③本人なりの優位に立ちたい欲求(一番になりたいなど)
④うまくできない自己受容の低さ

などがあげられます。もう〇年生だから我慢しなさいというような大人の理屈は通じませんので、その子なりの我慢ならぬ気持ちを受け止めていくことが大切になります。

上記の内容は比較的理解がしやすいものかと思いますので、今回はもう少し癇癪の本質にせまりたいと思います。

進化の過程から見た脳機能と癇癪

脳は、3層構造とよく言われます。これは1973年にアメリカのポール・マクリーン博士が脳を三分割に分け「三位一体脳」という理論を提唱したことによります。人間の脳を、縦に輪切りをすると、三層構造になっているというものです。これを3階建ての住宅に例えて説明してみます。

1階にあたるのが「脳幹」です。爬虫類脳とも呼ばれ、呼吸や体温調節、生殖など生命維持機能の役割を果たしており反射的に働く脳であり、原始的な生きるための脳とも言えます。2階にあたるのが「大脳辺縁系」です。哺乳類脳とも呼ばれ、情動や意欲など感じるための脳です。3階にあたるのが「大脳新皮質」です。人間脳とも呼ばれ、思考や記憶など目的的に生きるための理性を司る脳です。

脳の三層構造を示すことで何を言いたいのかというと、3階の人間脳である大脳新皮質(とりわけ前頭葉)が育つことで、2階の感情的な脳にブレーキをかけるシステムがはたらくかどうかが癇癪が起こるのか起こらないのかということです。

子どもの行動の例えにはふさわしくありませんが、大人がお酒を飲み過ぎてしまい、暴力などを起こしてしまうことがあります。これはお酒により、3階の理性脳のブレーキシステムが働かず、怒りなどの感情のままに行動してしまった状態です。

本当は良くないことと分かっていながら行動にブレーキがかからない状態で、抑制がかからない状態ということから「脱抑制」と呼ばれる状態を言います。

子どもは脳が育っていく際中ですので、そもそも3階の前頭葉機能の抑制機能はまだよく働かない状態です。それでも認知が育つ中で、少しずつ人が見ている中で騒ぐことは恥ずかしいことであったり、迷惑をかけるからイライラしても騒がないという抑制システムを効かせていけるようになっていきます。

幼児が癇癪を起すことは仕方がないことと捉えられる理由です。それが年齢を重ねても癇癪が起き続けるという場合は、知的な遅れが無い場合は脳機能の視点から見ていくことも必要です。

あまり知られていない癇癪の原因

理由が分かる癇癪の対応は他の方のblogにお任せするとしまして、ほとんどネットで書かれていない内容について記していきます。

原因① 脳の覚醒状態

癇癪を起しやすいお子さんを見ていると、そもそもの脳の覚醒(活動性)が高まり辛い状態や、下がりやすいお子さんが多いです。

例えるなら、寝落ちする直前のお子さんを思い描いてみてください。ハイテンションで騒いでいたかと思ったら、振り返ると寝落ちしていたなんて姿を見たことがあると思います。

騒いでいたり、激しく動いているから脳の覚醒が過覚醒かというと、寝落ちする直前ですから、脳の活動性は下がり気味であり、どちらかというと低覚醒の状態といえるはずです(図1:脳の覚醒レベル)。

(図1:脳の覚醒レベル)

もちろん、本当に夜、寝る直前でしたら覚醒は下がっていってもらわないと困るわけですが、本来脳の活動性が高まっていないといけない日中に覚醒が下がりやすいということは、注意力や判断力、情動のコントロールも難しくなることが癇癪の原因となりがちです。

原因② 感覚の過敏さ「触覚防衛反応」と「聴覚防衛反応」

感覚の過敏さが強くあるお子さんは、常にストレスにさらされている状態です。特に、防衛反応と呼ばれる1階の脳幹レベルで起こる命を守るための反応は、生命維持に関わりますので癇癪の大きな原因となります。

癇癪と発達障害の関係性

感覚の過敏さは、現代のお子さんにとり非常に多くいます。過敏さが強いとすぐに発達障害と結びつけたくなる発想が多いようですが、そのようなわけではありません。

発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、感覚の過敏さ(触覚や聴覚の過敏さ)が強いことが多く、癇癪につながりやすいということはあります。言い換えますと、発達障害に限らず、感覚の過敏さがあること自体が前述した通り、命の危険にさらされていると脳機能的に判断しますので、強いストレスにさらされ癇癪の原因となりがちということです。

例えば、人が多いようないつ誰かに触れられるような場所だったり、大きな音の他にも大人が気づかないような音域の音がする場所だったりというのは、気づかないうちにお子さんが耐え難いストレスにさらされていることがあるというわけです。

このような環境で癇癪やパニックが多い場合は、感覚の過敏さ(防衛反応)ゆえのストレスとして起きている可能性があります。触覚や聴覚の過敏さの改善が大切となります(改善方法は後述します)。

愛着(アタッチメント)形成の不全

触覚防衛反応があることで、もう一つ癇癪の原因となるのが、愛着の形成不全となりがちだからです。愛着(アタッチメント)とは、心の安全基地を育てる源となります。触覚防衛があることで、心の安全基地が形成され辛くなります。

何か不安な出来事に対して、自分を立て直す土台が愛着なのです。保護者がいくら愛情を注いでも、受け手の子ども側に防衛反応があることで、愛着が形成され辛くなるのです。この視点がほとんどの愛着形成理論に欠けています。

心の安全基地を育てるためにも、触覚防衛反応の改善が必須となる理由の一つです。

原因③ ボディイメージの未発達さ

ボディイメージとは、身体的な自分の捉えだけでなく心理的な自分の捉えの源ともなります。この自分の姿が捉えられないということが何をもたらすのでしょうか。

自分が見つからないという状態となり、自我の発達に影響を与えます。自分という存在を自分自身で認識していくことができないということは、他者に依存することや、他者に何か影響を与えることで自己の存在を確認しようとします。

本来であれば、自分で自分を支えようとしていくところが未形成となり、情動が崩れやすくなるというわけです。

癇癪改善へのアプローチ

上記①覚醒の課題、②感覚の過敏さ(防衛反応)、③ボディイメージの未発達に対して共通する発達課題があります。

それは、「平衡感覚」の未発達です。癇癪と平衡感覚が関係するの?と思われたかもしれませんので、順番に解説いたします。

平衡感覚は次の3つの神経経路のつながりがあります。

①前庭ー自律神経系(覚醒に関与)
②前庭ー動眼神経系(目の使い方に関与)
③前庭ー脊髄系(姿勢の調節に関与)

①の前庭ー自律神経系についてです。ジェットコースターに乗った後に、眠いなぁという人はまずいないはずです。それこそ、ハイテンションで楽しかったや、怖かったと言いつつも笑顔だったりすると思います。このように急激な加速度刺激は脳の覚醒を高めるのです。

アセスメント

本当に平衡感覚の反応性が低いのか簡単20秒で確認する方法があります。何かというと「回転後眼振検査」というものです。

2秒で1回転の速度で10回転した後に、眼球が左右にプルプル揺れるのが何秒続いて止まるかを測定する方法です。

3歳未満では2,3秒でればというところですので、未就学児は参考程度にされてください。小学生以上で5秒未満、さらには眼振が出ない(0秒)という場合は、平衡感覚の低反応性が考えられます。

そこで、トランポリンやブランコなど急激な加速度が加わることで脳の覚醒を高めていきます。トランポリンは重力加速度(地球の重力)しか得られないので、さらに加速度が得られる運動として宇佐川研ではバルンポリンをおススメしています。

トランポリンとバルーン(セラピーボール)を掛け算することでより強い加速度が得られ、平衡感覚の鈍麻さがあるお子さんの覚醒を高めやすくします。

覚醒が高まることで、触覚や聴覚の過敏さに対して、3階の脳である大脳新皮質の前頭葉機能が高まるため、1階の脳幹レベルでで起こる防衛反応にブレーキ(抑制)をかけやすくする働きでやすくなります。

本格的な改善には、さらに触覚へのダイレクトなアプローチとしてタッチング(木村順考案)などが必要にはなります。

さらに、平衡感覚を使うことで、③の前庭ー脊髄系を活性化することができます。自分の身体を感じられるようになることで、ボディイメージ向上の土台を支えます。

食生活からの癇癪

もう1点、癇癪のほとんど語られない視点として食生活があげられます。腸内で心を安定させるセロトニンが9割生成されると言われています。しかしながら癇癪を起すお子さんの中には偏食も多く、腸内環境が良くないお子さんも多いのが現状です。

菓子パンなど小麦製品を多く摂ると、消化力の弱いお子さんではリーキーガットと呼ばれる腸もれというような状態となり、血管に食べ物から出る毒素が回ってしまうことがあります。

甘いものを摂りすぎることで、血糖値の急上昇と急降下が起こり得ます。甘い飲料水はすぐに体内に取り込まれるだけでなく、その後急降下も起こりやすくなります。特に低血糖を起こした際に情緒は崩れやすくなりますので、お菓子や糖分の摂り方には注意が必要です。

また、アスパルテームといった人工甘味料は興奮しやすくする物質と言われてもいます。カロリーゼロをうたった飲料やお菓子の中には、砂糖の100倍近く甘みを感じる人工甘味料を使っているものが多数あります。

少量食べたり飲んだりしたからといって害がでるわけではありませんし、食品としての安全性は保たれているとは言われていますが、過剰に摂取することや、お子さんの中には反応しやすい子もいると言われています。

偏食の苦しさもわかりますので、せめてもの置き換えられるような努力や量を減らすなども改善のきざしとなり得ます。

偏食の改善についてはまた別のblogをご紹介して参ります。

癇癪とストレス

幼児に限らず子どもたちは、ストレスが3つ重なると耐え難い状況になります。大きなストレスに限らず、①感覚の過敏さ、②眠い、③お腹がすいた、これだけでも我慢できないものです。

さらに、花粉症の季節やアトピー性皮膚炎などアレルギーのあるお子さんは、さらに1つ常にストレスを抱えていることになります。

ストレスの要因が多ければ多いほど癇癪の原因となります。その際にお子さんの辛さをまず考えて頂けたらと思います。その上で対処して頂きたく思います。

対処の在り方

まず、癇癪を起しているお子さんに対して、大人の感情をぶつけても良いことは起こり得ません。叱っても怒鳴っても火に油を注ぐことになります。

まずは、余計なことを言わず、安全を確保していただき、やさしく後ろから抱えていってください。その際にお子さんの頭による後ろへの頭突きには注意をしてください。

カームダウンスペースなど、静かな環境に誘導して落ち着くのを待つことも有効です。家庭なら少し重めのブランケットなどをかけてあげることで沈静化しやすくなることもあります。

また、癇癪を越した際にどのように対応するのか癇癪を起す前に事前に伝えておくこともお子さんにとっては安心材料になり得ます。

まとめ

癇癪と言っても様々な理由や原因で起こり得ます。その原因を探ることがとても大切になります。今回は、その原因が特定でき辛いものに対して視点を当ててみました。

原因が分かれば、少し大人の方も余裕をもってお子さんの癇癪に対応できるはずです。

また、激しい癇癪に対して自分の身もお子さんの身も守るための術をもち得ていることも大切です。「護る」という点については、研究会でも講座をして頂いたことがあります「廣木道心先生の支援介助法」がとても有効です。

宇佐川研では、癇癪やパニックについて30年以上研究し続けています。本当に困っている方はぜひ宇佐川研や発達支援ドットコムにお問い合わせください。

最後に発達支援ドットコムの中のコンテンツの中から癇癪の宇佐川研的な考え方について動画を掲載しておきます。サロンの中には数十本の癇癪やパニックにまつわる考え方や改善アプローチについて動画をアップしていますので、ご活用ください。

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