『落ち着きがないからと服薬をすすめる前に確認して欲しいこと』

服薬、その前に確認したいこと
授業中に立ち歩く、急に大きな声を出したり泣き叫ぶことが多い、激しい癇癪が多いなどがあると、すぐに服薬(抗精神病薬)を保護者にすすめる流れを強く感じています。
また、保護者も少しでもお子さんが穏やかではないことがあると服薬しないといけないのではないか⁈となる傾向が強くなってきていると感じるエピソードが個人的にも増えてきました。
今回は、服薬を検討される際に2つの視点からも検討するきっかけになればと思い投稿しています。
1つは、抗精神病薬とはどのようなものなのか?という確認としての側面。
2つめは、落ち着きの無さなどの症状の背景理解です。服薬では改善しないことが多く、服薬でどうにかしようとすることへのリスクを理解した上で飲ませて欲しいという側面です。
気づいたら長くなってしまったので、ブックマークなどして、お時間ある時にお読み頂けたらと思います。
安易な服薬への警鐘
警鐘として、支援者側がお薬の知識が無いのに安易にお薬(抗精神病薬)を勧めるのはどうなのだろう?と疑問に思います。
ただ単に支援技術や知識が不足していることに目を向けず、子どものせいや障害のせいにしているだけではないかと感じることがあるからです。
服薬を否定するつもりはありません。ただ、本当に必要かな?と思うことも増えてきており、服薬することにより逆に支援が進まないこともあるという事実を知って頂けたらと思います。
まず、服薬を考える背景に、お子さんの家庭での激しい癇癪があります。
発達障害のお子さんの子育てとして、まだまだ母親の負担が大きい現状があります。
母親一人で激しい癇癪を起こす我が子と対峙するのは大変となり、服薬を考える多いケースです。
中には学校や放課後デイサービスで他のお友達を叩いてしまったことから、薬を勧められたというケースも散見します。
そうなるとどなたか専門家に相談となります。
保護者にとって身近に相談できる専門家となると、お医者さん(主治医)となりやすいかと思います。
お医者さんができることの多くは投薬です。OTやPTがいる病院でしたら運動面などからの取り組みもありますが、そのような環境がある病院がとても少ない現状です。
落ち着かないという事で、服薬として用いられやすいお薬が「リスペリドン」です。
リスペリドンは脳内の神経伝達物質(ドパミンやセロトニン)のバランスを整える「非定型抗精神病薬」です。幻覚や妄想などの症状を抑え、精神の安定や気分の波を和らげる働きがあるとされています。
まず、お薬ですので、このような正の効果だけではなく副作用もあるということは認識する必要があります。
リスパダールの副作用として以下の内容が示されています。
リスパダールの副作用
① 錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)
脳の大脳基底核では、ドパミンが運動を滑らかに調整しています。リスパダールはドパミン受容体を遮断するため、運動調整がうまくいかなくなることがあります。
症状としては、
- 手足が震える
- 身体が固くなる
- 動きがぎこちなくなる
- 表情が乏しくなる
- じっと座っていられない(アカシジア)
- 首が曲がる、目が上を向くなどの筋肉の異常緊張
などがあります。
学校現場では
「落ち着いた」のではなく、
「身体が動かしにくくなっている」
場合があります。
また長期服用では、
- 口をモグモグする
- 舌を突き出す
- 顔がピクピク動く
といった遅発性ジスキネジア(不随意運動(自分の意思とは関係なく起こる運動))が生じることがあります。※田辺三菱製薬株式会社ページより参照
② 高プロラクチン血症
これがリスパダールの代表的な副作用です。
通常ドパミンは「プロラクチン」というホルモンを抑えています。
しかしリスパダールによってドパミンが抑制されると、プロラクチンが過剰に分泌されます。
その結果、
女子
- 月経不順
- 無月経
- 乳汁分泌
男子
- 女性化乳房
- 性ホルモン低下
子ども
- 思春期発達への影響
- 骨密度低下の可能性
などが問題になります。この副作用は本人も気づきにくいため、定期的な血液検査が重要です。※香川大学医学部より参照
③ 体重増加・代謝異常
リスパダールは食欲を増加させることがあります。
- 体重増加
- 食欲亢進
- 血糖値上昇
- 糖尿病リスク増加
などが報告されています。※一般社団法人くすりの適正使用協議会参照
発達障害児では、
「薬を始めてから急に食べる量が増えた」
という形で気づかれることがあります。
その他によくみられる副作用
- 眠気
- だるさ
- めまい
- ふらつき
- よだれ
- 便秘
- 不安
- 不眠
- 口渇(口の渇き)
発達支援の立場からの考察
リスパダールは、
- 感覚過敏
- パニック
- 興奮
- 他害
などを一時的に抑えることがあります。一時的というのは、服薬して、薬の成分が効いている時間だけということです。薬が切れれば症状はまた現れやすくなります。
そして薬は「脳の発達を促す」わけではありません。
特にドパミンを抑える作用は、
- 自発性
- 探索行動
- 運動発達
- 学習への意欲
にも影響する可能性があります。
そのため、お薬を飲み、
「問題行動が減った=発達した」ではない
という視点が非常に重要です。
服薬によって落ち着いたように見えても、
- 表情が減った
- 活動性が低下した
- 遊びが減った
- 動きがぎこちない
という変化がないかを観察する必要があります。
落ち着きの無さや癇癪を起す要因(2つ目の視点)
子どもの行動には本来、
- 感覚処理の困難(触覚・聴覚防衛反応など)
- 不安
- 見通しの弱さ(認知発達段階など)
- 身体調整の未熟さ(ボディイメージの発達など)
- コミュニケーション困難(表出手段の少なさなど)
- 環境とのミスマッチ
など、いくつもの「理由」があります。
その背景を十分に整理しないまま、
「困った行動を止める」方向だけで服薬が進むと、
結果として、
- 子どもの主体性
- 動く力
- 感情表現
- 発達の機会
まで抑えてしまうことがあります。
一方で、重要なのは、
「薬を否定する」ことと、
「慎重に使う」ことは違う
という点です。
実際には、
- 本人の苦痛が非常に強い
- 睡眠が崩壊している
- 家庭や学校生活が維持できない
- 強い衝動性で危険がある
など、薬によって生活が安定するケースもあります。
そのため大切なのは、
「なぜその行動が起きているのか?」
を支援者・保護者・医療が共有し、
- 環境調整
- 感覚運動面への支援
- コミュニケーション支援
- 身体づくり
- 安心感形成
を行いながら、
必要最小限で、
丁寧に経過を見ることです。
発達支援の視点で特に重要なのは、
「薬で静かになった」のか
「安心して落ち着いた」のか
は、全く違うということです。
前者は“抑制”、
後者は“発達”です。
この違いを見抜けるかどうかで、
子どもの長期的な育ちが大きく変わっていきます。
お薬に頼りやすい背景理解
宇佐川研の臨床経験から、触覚防衛反応由来の他害や癇癪、前庭系(平衡感覚)低反応由来の多動(落ち着きの無さ)に対して服薬がされた場合、確かに落ち着きと言いますか、その大人が困ったとする症状は一見停滞します。
しかしながら、服薬されてもその症状が治まらない場合のほとんどはお薬の量の増量となります。そうした場合、確かに多動などは減るかもしれませんが、床に寝転がり動けない時間が増えたり、ぼうっとしている時間が長ったりして、学習が進まないなども増えやすくなります。
また、服薬量が増えれば触れるほど、運動療法による効果も得られにくくなるといったことを観察することが多く、より改善が難しくなるということも多く見られてきました。
一般的には安全とされていますが、少なくともお薬はお薬です。お薬は肝臓で代謝(分解)され、腎臓から排泄されていきます。
風邪薬などは短期間での使用ですが、抗精神病薬は一旦処方された場合、なかなか根本的な改善には至らず、減薬や使用の中止になることは少ないように感じています。
病院経営の観点で見ると、お薬自体の薬価は大きなものではありませんが、診療報酬という点から見ると、
- 5分診療
- 短時間で多数の再診
- 環境調整や家族支援より服薬調整が中心
という診療スタイルになると、
結果として「薬物療法に依存しやすい構造」が生じる可能性があります。
これは医師不足の現状からも、「限られた診療時間の中で薬物療法が選択されやすい」
という診療システムの問題として語られることが多いです。※株式会社CUCより
発達支援の立場から見ると、むしろ本質的な問いは「その子の行動の背景にある感覚・運動・認知・環境要因を十分評価した上で処方されているか」
だと思います。
子ども達の発達や人生を考えた際、
- どのような評価が行われたのか
- 非薬物的支援は検討されたのか
- 定期的な減薬・中止の検討がされているのか
の方が、子どもの長期的な発達という観点では重要ではないかと思っています。
最後に
発達支援において、問題行動と言われる子ども達の行動と出会った際、いきなり服薬とならずに、環境調整であったり、そもそもの原因や要因は何であるのかをまず検討して欲しいと思います。
特に感覚面や認知面の課題であれば、それこそが支援すべきことのど真ん中ではないかと思います。
その上で、お子さんの安全や周りの方の安心を守るためにどうしてもお薬の力を借りる場合は、根本的な要因へもアプローチしつつ、お薬の力を借りて欲しいと思います。
支援者側に要因や原因を見抜くための知識不足によって即服薬となっていると思います。
触覚防衛反応の仕組みや改善へのアプローチ方法などは、研究会で何十年と続けてお伝えしてきている内容です。ぜひとも理解からの支援が進められることを願っています。














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